2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploring Perspectives of "Science of Japanese Historical Documents" from the Scope of Mixture Analysis of Papers in the Early-modern Period
Project/Area Number |
18K18534
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 綾子 東京大学, 史料編纂所, 特任助教 (80593657)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
高島 晶彦 東京大学, 史料編纂所, 技術専門職員 (10422437)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | 古文書科学 / 前近代の和紙 / 混入物 / DNA分析 / 構成物分析 / 古文書の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,1.古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2.DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3.これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2020年度は本研究で確立した分析基準にもとづき,古文書の分類と混入物の種類・量・密度の比較分析,和紙の製造手法・地域・時期の検討を進め,「古文書科学」の学問としての可能性の検討を行った。
2020年度前半は,新型コロナウイルスの感染拡大によって原本史料の調査とDNA分析に関わる調査が大幅に制限され,計画していた調査の大半は実施ができなかった。そこで,2019年度までに得られた分析データを用いて,古文書の分類と混入物の種類・量・密度の比較分析(統計ソフトウェアRを用いた統計解析など)を行い,古文書の総合的な科学研究につながる標準的データの獲得に努めた。秋以降は史料調査と混入物の分析を実施することができたため,新たな調査データの分析については,2021年度も継続することとした(渋谷・高島)。植物原料のDNA分析(石川・渋谷)も同様に,2020年度後半に実験を進め,和紙の構成物の由来を特定するためのゲノム情報拡充に努めた。
構成物分析の結果は,Digital Humanities2020(DH2020,2020年7月)および国内の学会・研究会で報告し,松尾大社社蔵史料に関する原著論文を『東京大学史料編纂所研究所紀要』31号(2021年3月)に投稿し掲載された。また,2019年11月の国際シンポジウムにおける研究分担者石川・高島の研究成果は,『古文書研究』第90号(2020年12月)に所収された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は,新型コロナウイルスの感染拡大によって各種の研究活動が制限された結果,予定していた調査の多くが実施できなかったことによる。あわせて,2019年度末に調整を行った台湾・中央研究院の研究協力者との国際共同調査が延期となった。国際共同研究については,2021年度以降の感染状況が収まった頃に改めて計画することとなった。さらに,2020年度は参加・報告を予定していた多くの国際会議が延期または中止となり,海外の研究協力者との直接的な情報交換についても断念せざるを得なかった。結果として,2020年度はこれまでに獲得した各種のデータ解析や方法論の検討に集中することとした。
研究データは国内の学会・研究会で報告するとともに,原著論文として複数の査読付学術誌へ投稿し掲載された。さらに,秋以降に実施した史料調査では,松尾大社社蔵史料(10月),神奈川県立金沢文庫所蔵史料(12月),都城島津邸島津家文書(12月),陽明文庫所蔵史料(2月),御室仁和寺所蔵史料(3月)における料紙の顕微鏡観察を行った。これらの構成物の解析は現在も継続しており,2021年度に参加予定の学会・研究会での報告や学術誌への投稿を予定している。DNA分析では,2019年度に引き続き,現生カジノキ類のサンプルの収集を進め,DNAマーカー開発,植物系統間の識別の現状について検討を行った。こちらも学会・研究会での報告や論文執筆を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大によって,全体的な研究活動の遅延が生じたが,2020年度後半以降に実施した史料調査・構成物分析では,良好な研究データが得られ始めている。解析中のデータとあわせて,2021年度にすべての研究結果をまとめて「古文書科学」の成果として公開する。
研究成果は,国内外の関連学会・研究会で報告を行うとともに,原著論文としてまとめ,査読付き学術雑誌への投稿準備を進める。さらに,研究代表者の渋谷が携わる他の共同研究に対して,本研究データの提供や他機関の情報システムとのデータ連携を進め,古文書の総合的な科学研究の展開につなげていく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大によって研究活動が大幅に制限され,2020年度に予定していた史料調査(3回分,京都)をやむなく中止した。そのための旅費交通費,調査で使用する消耗品費が次年度使用額である。
旅費(史料調査2泊3日)1名60,000円×3回=180,000円;物品費(消耗品費)=6,229円
|
Research Products
(18 results)