2019 Fiscal Year Research-status Report
診療報酬情報を活用した保険者機能強化方策のためのパイロットモデルの策定
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18K18550
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 智章 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90177460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 正朝 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00422618)
富塚 太郎 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 特任研究員 (60553394)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 診療報酬情報 / センシティブ情報 / 医療費抑制 / 保険者機能 / 審査支払機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度からの懸案であった全体研究会を4月に実施し、それを受けて、研究代表者・加藤は、北海道農業健康保険組合(6月19日)、北海道国民健康保険連合会(7月16日)、上富良野町役場保健福祉係(12月9日)および空知中部広域連合(12月10日)への訪問調査を行った。 これらの訪問調査から明らかになったことは、第1に、保険者レベルではビッグデータを活用する機運は醸成されていないことである。いくつかの理由が考えられる。ひとつは、ビッグデータがどのようなデータを含むものなのか、ビッグデータの全体像がイメージされていないことである。このことは、アクセスの難易度はデータ項目により異なることによって、一層増幅されている。いまひとつは、ビッグデータをどのように活用するのかについて、試行錯誤の段階にあることである。これは、診療情報がセンシティブ情報であるが故に、保険者にとって、どこまで踏み込んだ分析を行うのかの線引きが難しいことに起因すると思われる。また、小規模保険者の場合、データの小ささが医療費抑制のための有意なツールとならないことや、保健師活動の展開により予防効果を発揮している場合には、ビッグデータの存在はあまり意味をなさないことも理解された。これらのことから、グッドプラクティスの事例を収集すること、ビッグデータの全体像を大きな分類軸に応じて分析する必要性を認識することができた。 分担者・鈴木は、情報法制研究所の代表理事として次世代医療基盤法の立法化に向けた検討作業に従事し、センシティブ情報の範囲確定、情報匿名化など、ビッグデータの社会実装化に向けた課題について研究を進めている。分担者・富塚については、2019年度は診療活動に重点を置かざるを得ない状況にあったものの、糖尿病に関するデータ解析の必要性に関する知見の提供と受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
診療情報に関するビッグデータの活用を目指す「次世代医療基盤法」は2017年法律28号として成立し、2018年5月11日から施行された。この法律によって、・大量の診療データにより治療選択肢の評価等に関する大規模な研究の実施が可能となる、・異なる診療機関・診療科あるいは領域の情報を統合した治療成績の評価を通じて、健康状態の向上の可能性が広がる、ことなどが期待される。しかし、同法は「医療分野の研究開発に際するための匿名加工医療情報に関する法律」という正式名称から明らかなように、医療分野の“研究開発”に重点を置くものであり、2019年12月にようやく認定匿名加工医療情報作成事業者(一般社団法人ライフデータイニシアティブ:「LDI」、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ:「NTTデータ」)が認定された。 次世代医療基盤法の核となるべき匿名加工医療情報作成事業者の認定がやや遅れたことに併せて、具体的な医療情報に密接に関わる診療報酬が2020年に改定され、介護報酬については2021年に改訂される予定である。従って、匿名医療情報の具体的な活用は2020年度以降ということになる。 以上のようなことから、保険者機能を強化する方策として、次世代医療基盤法に基づく医療情報がどこまで有用であるかについて、十分検討を尽くすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代医療情報法の施行状況とも関連して、本研究の核心である社会保障・税番号制度を活用したオンライン資格確認等システムの開発スケジュールが遅延しており、具体的な運用が令和3年度中盤にずれ込む可能性が高いことが判明した。また、先に述べたように、個別の保険者レベルではビッグデータの活用が必ずしも医療費抑制に直結しないことが了解された。このため、研究課題における保険者機能の強化という側面に重点を置いて、そこで活用すべき診療報酬情報や特定健診の実施状況において活用されているデータなどの活用方法や課題を明らかにする。 このように、研究対象をダウンサイジングしつつ、保険者機能の発揮しているグッドプラクティス事例を掘り起こす。また、ビッグデータの分析により制度全体を通貫する診療報酬の合理化が図られることと個別保険者における医療費抑制策とがリンクしない原因やリンクさせるための課題を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ヒアリング調査を効率的に行うなど、経費を節約することができたため、一定の残額が発生した。この残額を用いて、診療報酬体系の一元化先行事例である韓国あるいは台湾について情報収集を行うと同時に、個別保険者に対するデータ活用事例の検討を継続する。 韓国等の現地視察も検討しているが、現下の情勢からできない場合についての対応を検討しているところである。
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Research Products
(19 results)