2019 Fiscal Year Research-status Report
クルド系アクターが国際秩序の安定化/不安定化に与えるインパクトに関する研究
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18K18560
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
今井 宏平 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究員 (70727130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 英之 近畿大学, 総合社会学部, 講師 (10755466)
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (30348841)
青山 弘之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60450516)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | クルド人 / 非承認国家 / トルコ / シリア / イラク / イラン / PKK / 北イラク地域政府 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国家をもたない世界最大の民族と言われ、イラク、イラン、シリア、トルコに跨って居住しているクルド人に注目し、クルド人の非政府主体が現在の国際秩序に与えるインパクトを検討する。 本研究は研究目的達成のために実証分析と理論分析の2段階で検証を行う。実証分析に関しては、大きく2つの分野に分類が可能である。第1に、イラク、イラ ン、シリア、トルコにおけるクルド人の活動に関する詳細な分析である。第2に、武装組織の実態、紛争解決に向けた手段、そして紛争後の和解に至るプロセス に関する分析である。 2019年度は2018年度に続き、トルコ、イラク、シリア、イランの専門家が各国のクルド人の状況について現状分析を行うとともに、国際関係論、政治学、社会学の理論もしくは概念から各国のクルド人組織について分析を行う下準備を行った。前者に関しては、アジア経済研究所の特別講演会「クルド人への理解を通して中東への理解を深める:政治・国際関係を中心に」(2019年6月24日開催)において、今井、青山、吉岡がクルド人組織の現状について発表を行い、貫井が討論者を務めた。また、2019年10月のトルコ軍のシリアのクルド組織である研究代表者の今井が2019年10月のトルコ軍の北シリア攻撃について『外交』に寄稿を、青山がウェブ媒体(yahooニュース)にシリアのクルド人組織に関する論考を執筆した。後者に関しては、今井と岡野がトルコのPKKに関して、暴力組織論の観点から、吉岡と廣瀬が北イラク自治政府を非承認国家論の観点から、青山と阿部がシリアのクルド人組織を移行期正義の観点から、貫井と辻田がイランのクルド人組織を統治なき地域論の観点から、分析を行うべく、各ペアで検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状分析に関しては2018年度に続き、ある程度の成果を出すことができた。特に一年目の成果を踏まえたうえでアジア経済研究所の特別講演会を実施できたことは成果であった。一方で、3~4回を予定していた研究会を2回しか行うことができず、各ペアでの議論をもう少し深めたうえで、全体でその知見を共有することができなかった。加えて、コロナ・ウィルスの影響で、2020年5月に予定していた日本中東学会の年次大会で企画が通り、準備を進めていた本研究の参加者による「非国家主体の理論と実践-クルド人の非政府主体を事例として」というセッションが中止となってしまったことも研究の進捗を遅らす要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は上述した中止となった日本中東学会の年次大会での発表の他、青山と岡野が日本国際政治学会の年次大会での発表も予定している。また、秋に研究会メンバーでトルコを訪問し、現地の研究者、および海外から招聘した専門家たちと非国家主体に関するワークショップを実施する計画も立てていた。しかし、いずれもコロナ・ウィルスの影響で実施が不透明な状況となっている。もし、ワークショップや海外から専門家の招聘が難しい場合は、来年度に一部の予算を繰り越すことも選択の1つとして検討している。一方で、2020年度に刊行もしくは出版社に原稿を提出する予定である編著に関しては予定通り進めていきたい。
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Causes of Carryover |
以下の2つの理由により、次年度使用額が生じた。まず、最終年度の成果刊行の際に資金が必要となる可能性があるので、最終年度に一定額を繰り越した。加えて、最終年度にトルコで代表者、分担者、研究協力者、さらに海外招聘の研究者、トルコの研究者を加えたワークショップを行うことを計画しており、そのための資金を残した。ただし、ワークショップに関してはコロナウィルスの影響で今年度に実施することが難しい可能性がある。その場合、延長手続きをしたうえで来年度にワークショップを実施することも視野に入れている。
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Research Products
(17 results)