2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K18694
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平松 千尋 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (30723275)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 色 / 見かけの温かさ / 色覚多様性 / 文化規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
人には色と温かさを結びつける共感覚的な対応があることが一般的に知られており、赤から黄にかけては暖色、青領域は寒色とカテゴライズされる。しかし、この対応がどのように生じるのか、また個人間の共通性と多様性については未解明な部分が多い。 本研究では、生理学的制約と文化の相互作用によって、色と見かけの温かさの対応が作られると予想し、生理学的制約の基で文化の影響を受けながら、どのように発達過程でこの対応が獲得されるかについて明らかにすることを目的としている。 一年目は、発達に伴う対応付けの変化と、錐体細胞の種類という生理学的制約の影響を主に検討した。6歳以上の3種類の錐体細胞を持つ多数派の3色覚者と、2種類の錐体細胞を持つ少数派の2色覚者を対象として、赤、黄、緑、青、紫の5色相、vivid、light、soft、darkの4トーン(明度と彩度を含む概念)の組み合わせからなる20枚の色票のうち、同時に呈示した2つの色票から、見た目に温かいと感じる色票を選択する心理実験を実施した。その結果、2色覚および3色覚の成人の多くは、一般的に知られている結びつきの通り、赤や黄は温かく青は冷たいと対応付けた。また、彩度の高い赤と温かさの結びつきは、その他の色よりも個人差が小さい傾向にあった。さらに、明るい色を温かいとする人と、暗い色を温かいとする人の両者が存在した。6歳から12歳までの児童期では、2色覚者、3色覚者ともに、成人とは異なる対応付けが多くみられた。これらのことから、色と温度の対応付けは、個人の視細胞の種類によらず、発達過程で文化の規範的な対応付けが獲得されると考えられる。しかし、色相によって個人差の程度が異なることから、視細胞の種類、環境中の色相分布、それらの相互作用等、個人差に影響する要因をさらに詳しく検討する必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色と温度の対応付けの発達過程を調べる色票を用いた心理実験が順調に進んだ。主に児童期と成人を対象に調査を進めてきたが、さらに段階的に対応付けの変化を調べるために、青年期にまで対象を広げた。また、色だけでなく、光沢感などの物体の表面特性全般を含めた質感が、どのように見た目の温かさに影響するかを捉える心理実験にも着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目で明らかになってきた、色と温度の対応付けの個人差をもたらす要因について詳しく調べる。特に、赤と温かさの結びつきは他の色相よりも強固であると考えられるが、どのような生理学的制約または物体の色分布や文化規範等が関連しているのかを詳細に検討していく。 また、色以外の物体の特徴が見た目の温度に与える影響についても検討する。近年発展している物体の質感知覚研究によると、物体表面の情報から得られる視覚的な温かさは、色だけでなく、光沢感など手触りとも関連する質感も重要であることが分かってきている。よって、色と温度の関連付けを理解するためには、色以外にも物体表面の様々な質感を考慮する必要がある。そこで、光沢感など、色以外の物体表面の質感が、どのように色と相互作用して、見た目の温かさに影響するかを、新たな研究項目として設定する。まず、様々な色・形・光沢感などの質感特徴を持つ視覚刺激をコンピューターグラフィックスで作成し、見た目の温かさの主観評価実験から開始する。色も包含した物体表面の質感特性に研究範囲を拡張することで、見た目の温かさの獲得過程の総合的な理解が可能となる研究を進める。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進み、色以外の物体表面の質感を包含した実験を開始するにあたり、視覚刺激呈示装置の購入のため、前倒し支払請求を行った。その他の使途の予定が少しずれたため、最終的に次年度使用額が生じた。前倒しした分、2年目以降の交付額が減少したため、次年度使用額は有効に活用する予定である。
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Research Products
(3 results)