2018 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者が能動的に白杖で叩くことによる音情報の作製と利用に関する基礎的研究
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18K18698
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
布川 清彦 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (90376658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井野 秀一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 総括研究主幹 (70250511)
関 喜一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (60357316)
酒向 慎司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30396791)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 白杖 / 音 / 硬さ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖により能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.目的を達成するために,次の4つの研究を計画した.「研究1白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析」:それぞれの白杖で(人を介在させずに)一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を用意して機械的に対象を打った時の音を録音し周波数分析することで,硬さに対する基本的な白杖の打撃音の特性を検証する.「研究2白杖によって作られる音情報における人の効果検証」:白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として実際に人が白杖で対象を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法により推定する.同時に,生じた音を録音して分析する.研究1の結果と比較することで「人の効果」を検証する.「研究3白杖によって作られた音情報の効果検証」:音情報の効果を検証するために,研究2の条件で録音した音を再生して実験参加者に聞かせ,音情報のみで「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法により推定させる.研究2の結果と比較することで,音情報の効果を検証する.「研究4総合考察」:研究1から3の結果をまとめ,白杖を用いた能動的な環境情報取得における音情報の利用について考察し,実験方法の問題点と今後の研究展開について検討する. 初年度である2018年度は,研究1を実施するための装置選定と実験手続きの再考を行い,実験実施の準備を進めた.研究2については,実際に白杖を叩くことで生じた触覚情報によって生じた対象の物理的特性(硬さ)に対する感覚特性をマグニチュード推定法によって測定した.そして,握り方の違いの影響について検討した.この成果を2つの国際学会で発表し,それぞれを査読付きプロシーディングとして出版した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1および研究3を実施するための装置選定を行った.用意されている実験室で環境(反響)音と白杖が対象に接触した際に生じた音を合わせて採録することに適したマルチフィールドマイクロフォンと白杖が対象に接触した際に生じた音だけを採録するために指向性の高いショットガンマイクを選定した.また,マイクの選定に合わせて,周波数分析同時録音の手続きを検討した.これにより,研究1と研究3を2019年度に実施する準備が整った.研究2については,実際に白杖を叩くことで生じた触覚情報によって生じた対象の物理的特性(硬さ)に対する感覚特性をマグニチュード推定法によって測定し,さらに握り方の違いの影響について検討した.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に研究1と3を実施する準備を進めたことにより,2019年度は計画に従って研究1から3の実験を行う.研究1(白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析)では,人を介在させずに一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を用意して機械的に対象を打った時の音を録音し周波数分析を行う.白杖の材料には振動特性が異なるアルミニウムとカーボン含有率85%複合材の2種類,チップはナイロン製のペンシル型とマシュマロチップの2種類を条件とする.研究2(白杖によって作られる音情報における人の効果検証)では,白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として実際に人が白杖で対象を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」をマグニチュード推定法により推定する.研究3(白杖によって作られた音情報の効果検証)では,音情報の効果を検証するために,研究2の条件で録音した音を再生して実験参加者に聞かせ,音情報のみで「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法により推定させる.研究2の結果と比較することで,音情報の効果を検証する.
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Causes of Carryover |
本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖により能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.この目的を達成するために次の4つの研究を計画した.研究1:白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析,研究2:白杖によって作られる音情報における人の効果検証,研究3:白杖によって作られた音情報の効果検証,研究4:総合考察.このうち,研究1と3では,白杖が対象に接触した時に生じる音の録音と再生が実験の核となる.そのため,実験を実施するために用意された実験室で最適な実験システムを構築する必要があり,反響音も含めて採録できる採録システムと叩いた部分で生じた音だけを採録する採録システム,そして採録した音の再生システムを構築するためにマイク,オーディオインタフェース,処理のためのPC,再生用スピーカとヘッドフォン,周波数分析用アプリケーションの選定を行った.この選定に時間がかかったために2019年度に購入することにした.そのため2018年度は,研究1と3については具体的な実験手続きの作成や採録・再生システム以外の実験材料(白杖や硬度を変数とする材料等)の準備を行った.2019年度は計画に沿って実験を実施する.研究2については,2018年度中に実験を始めており,2019年度も計画に沿って実験を進める.
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Research Products
(12 results)