2018 Fiscal Year Research-status Report
量子ビーム小角散乱法とレオメータの組み合わせによる高せん断応力場潤滑油の構造解析
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18K18815
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
平山 朋子 同志社大学, 理工学部, 教授 (00340505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 洋次郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (60566793)
佐藤 信浩 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10303918)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | トライボロジー / 粘度指数向上剤 / X線小角散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
機械工学技術において、要素間の摩擦およびそれに伴う摩耗の発生に関する諸問題は極めて重要な課題であり、トライボロジー分野において多くの研究が行われている。近年の更なる省エネルギー化の流れに伴って低摩擦摺動実現の必要性は日増しに高まっており、特にエンジンオイル等においては、その実現のためにオイルの低粘度化が急速に進められている。オイルが低粘度化すれば粘性によるせん断抵抗は小さくなる反面、油膜切れが生じやすくなり、起動停止時の焼付きが問題となる。また、実運転条件においては機器の駆動に伴う温度上昇によりオイルはますます低粘度となり、摺動面はよりシビアな状態となる。そのようなシビアな潤滑状態において温度によるオイルの低粘度化を抑制するのが粘度指数向上剤(Viscosity Index Improver,VII)である。VIIは温度に応じて基油への相溶性が変化し、その効果で分子の大きさを変化させてオイルの低粘度化を防ぐとされているものの、基油中でのVII分子の大きさを測定した事例は極めて少ない。そこで本研究では一般的なVIIを対象として、温度が異なるモデル基油(スクワラン)中でのその分子サイズをX線小角散乱法(SAXS)にて測定した。その結果、SAXSで測定されるVII分子のサイズは温度を変化させても大きく変化しないこと、一方で原点散乱強度I0は温度上昇に伴って減少すること等が分かった。これは温度上昇に伴ってVII分子の側鎖が基油中に溶解し、その結果、X線による散乱断面積が減少したことを意味する。また。DLSの結果とも合わせることにより、温度変化に対するVII分子のおおよそのサイズおよび挙動を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標として掲げた内容まで順調に実験が進んでおり、概ね計画通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、SAXSのみでは側鎖まで含めたVII分子のサイズを同定することが難しいことが分かった。一方で、SAXSからはVII分子の核部分のサイズのみが分かるという事実をポジティブに捉え、別手法を用いて相補的に検証すればVII分子の構造が把握できることが分かった。次年度は中性子小角散乱法(SANS)や動的光散乱法(DLS)をより積極的に活用することにより、基油中におけるVII分子のさらなる構造解析を推し進める。
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Causes of Carryover |
研究の遂行状況に応じて予算を執行したところ、残額が発生した。現在、当初の計画通りせん断を加えることができるレオメータの設計製作を行っており、その予算に充てる予定である。
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