2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of bactericidal effect using controllable nanostructures
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18K19008
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊藤 健 関西大学, システム理工学部, 教授 (50426350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 寛明 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 上席研究員 (00359077)
新宮原 正三 関西大学, システム理工学部, 教授 (10231367)
清水 智弘 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80581165)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 抗菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
セミやトンボなどの翅には無数のナノ構造が表面を埋め尽くしており、その表面は抗菌性を示すことが近年報告された。本研究では、その抗菌メカニズムを解明するために、人工的に様々な条件を制御したナノ構造を作製し、構造や物理化学的性質と抗菌との関係を明らかにしようとしている。 初年度は、安価かつ大面積にナノ構造を作製するため、コロイダルリソグラフィとメタルアシストエッチングを用いることで2インチ角のシリコン基板に対して任意の寸法をもつ円柱状の構造物をアレイ状(ナノピラーアレイと呼ぶ)に配列させることに成功した。作製法を以下に記す。まずSi基板上にナノサイズの樹脂ビーズを単層配列させる。樹脂ビーズの直径により構造の間隔を決定できる。次に、酸素プラズマをこの基板に当てることで、樹脂ビーズを徐々に削っていく。この時の樹脂ビーズの直径がナノ構造の直径に相当する。次に、メタルアシストケミカルエッチングの際の触媒として働く金を上述した基板に薄く堆積させる。続いて、基板を特殊なエッチング溶液に浸すことでシリコン基板が深さ方向に異方的にエッチングされる。エッチング溶液に浸している時間で、ナノ構造の高さを制御することができる。最後に、金と樹脂ビーズを除去することでシリコン単体からなるナノ構造を形成することができる。この技術を用いることで任意のピッチ、直径、高さを持つナノ構造を得ることができた。 この技術を利用して様々な幾何学的な条件を変化させたナノ構造を作製し、その基板に対して抗菌評価を実施した。抗菌評価法にはJIS Z2801(フィルム密着法)を適用し、菌体として大腸菌をターゲットに抗菌評価を行った。その結果、抗菌性を示す条件を得ることができ、特許の申請に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況はおおむね順調であり、ナノ構造の幾何学的な特徴と抗菌の関係性を世界で初めて明らかにした成果は大きい。しかし、なぜそのような条件が必要なのかという「問」についての解明が必要である。そのためには、研究計画を着実に遂行していく必要があると改めて考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ構造の幾何学的な形状のみではなく、構造表面の物理化学的条件(濡れ性)が抗菌に及ぼす影響をマクロおよびミクロな視点で評価する予定である。そのためには、ナノ構造上に自己組織化膜(SAM)を形成することで、接触角(表面エネルギー)を制御したナノ構造を作製する。液体に触れる側の分子末端を親水性の場合にはOH基を疎水性の場合にはCH3基とし、その間は分子の配合比で制御を行う。マクロな抗菌評価はJIS Z2801に基づいた抗菌性評価を行う。また、ミクロな視点での評価として、蛍光顕微鏡を用いた1細胞レベルでの抗菌評価技術の導入を図る。
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Causes of Carryover |
大きな材料費としての支出となる予定であった金ターゲットを購入しなくても良かったため予定額との差が生じた。新年度では、水晶振動子にナノ構造を形成するプロセスを構築するため、実験に必要な多くの消耗品を購入する必要がある。また、開発した材料の抗菌スペクトルを評価する必要がある。抗菌スペクトルの評価には、薬剤耐性菌などの調査も重要であり、それを実施するには外部機関への試験委託が必要となる。以上のように研究の進展に必要な項目へ研究費を投入し、活用していく予定である。
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Research Products
(7 results)