2019 Fiscal Year Research-status Report
電気化学的還元手法を利用した触媒的窒素固定法の開発への挑戦
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18K19093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | アンモニア |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年4月に、PCP型ピンサー配位子を持つモリブデン錯体を触媒として利用する窒素ガスと水からの触媒的アンモニア生成反応が極めて効率的に進行することを明らかにして、一連の研究成果をNature誌に報告した(Y. Ashida, K. Arashiba, K. Nakajima, and Y. Nishibayashi, Nature, 568, 536-540 (2019).)。この反応では化学量論量の二ヨウ化サマリウム(SmI2)を還元剤として利用する必要があった。しかし、本触媒反応に電気化学的還元反応を適用し、反応に使用したヨウ化サマリウムの使用量を低減することができれば、実用化を格段に加速することが可能になる。この研究背景を踏まえて、三ヨウ化サマリウム(SmI3)から二ヨウ化サマリウムへの還元反応をモデル反応として検討を行った。その結果、還元剤として十分な還元力を有するデカメチルコバルトセンを利用することで、定量的に三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの反応が進行することが確認できた。本研究成果は、本研究目標である電気化学的還元反応が達成可能であること示す重要な研究成果である。この実験結果を基にして、三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの電気化学的還元反応の検討を行った。予備的な実験結果として、電解質を存在させない反応系では電気化学的還元反応の進行は全く観測できなかったが、電解質としてイオン性液体を存在させた反応系では電気化学的還元反応の進行を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの還元反応をモデル反応として、電気化学的還元反応の進行が確認できたことは大きな前進である。本反応系に対応した電気化学的還元反応装置の設計に当初の予定よりも時間を要したが、検証に必要な装置を準備することができた。ある種のイオン性液体を電解質として利用することが電気化学的還元反応を進行させることが必須であることを明らかにした予備的知見を踏まえて、今後の検証を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の現在までの進捗状況にも記載したように、三ヨウ化サマリウムから二ヨウ化サマリウムへの還元反応をモデル反応として電気化学的還元反応の開発に成功している。予備的知見として、ある種のイオン性液体を電解質として利用することが電気化学的還元反応を進行させることが必須であることを明らかにしている。この予備的知見を踏まえて、様々な種類のイオン性液体を電解質として利用した反応を検討する。イオン性液体の物性と反応性との相関関係を明らかにして、電解還元反応に必要な情報の収集を行う。この知見を踏まえて、最終目標の達成に取り組む。
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Causes of Carryover |
当初の予想に反して、電気化学反応装置の設計及び作成に、多くの時間を要することが明らかとなった。その為に、触媒的アンモニア生成反応の検証が当初の予定より大幅に遅延することとなった。研究目的をより精緻に達成するために必要な追加実験を行う必要が生じた。この研究進捗を踏まえて、当初の研究計画を修正する必要がある。追加実験のために必要な消耗品の購入や新しく見出した研究成果の発表に必要な費用に使用する。
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Research Products
(24 results)