2021 Fiscal Year Research-status Report
How Small Floating Insects Can Be Detected with High Resolution Radar - For Watching Flying Harmful Insects
Project/Area Number |
18K19201
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鷹野 敏明 千葉大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (40183058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 浩代 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (00241943)
中田 裕之 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30345011)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 浮遊虫 / 高分解能レーダ / ミリ波 / リモートセンシング / 飛来害虫 / 大気現象 / 雲レーダ / 虫採集 |
Outline of Annual Research Achievements |
高層の淡い雲の構造解明を主目的に、研究代表者らは高感度高分解能のミリ波レーダ FALCON-I (FMCW Radar for Cloud Observation-I)を開発運用してきた。この装置は従来のレーダに較べて空間分解能、ドップラー測定の精度が高い。 FALCON-I では大気中に浮遊する昆虫が感度良く観測できるので、この新しい手段を用いてどこまで小さい浮遊物が検出できるか、計数、サイズ分布、時間・高度分布、季節変化を探索・解明する手法を創設することが本研究の目的である。 初年度 2018(H30)年度は、9月末から10月初めにかけて空中浮遊物を採集する係留気球実験を実施し、FALCON-I で得られたエコーデータとの比較を行った。2019 (H31, R1)年度はさらに解析を進め、それまでに行った春・秋・冬の空中浮遊物採集実験の結果との比較を行った。その結果、気温が低い冬期は浮遊物体の空間密度が 春秋の1/5 程度となること、地上と上空の風速が弱い場合のほうが大気浮遊物体の空間密度が高いこと、などがわかった。3年目の最終年度 2020 (R2)年度は、さらに空中浮遊物を採取する実験を実施する予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響でフィールド実験ができなかったので2021(R3)年度に研究を延長した。2021年度は、国内での FALCON-I の観測と共に、北緯78°の北極域であるノルウェースバールバル諸島で運用している同型装置 FALCON-A での観測を行い、気象条件との関連などについて観測解析を行った。その結果、FALCON-A サイトでは地上の気温が15℃を超える日は少ないが、そのような日においても大気中に浮遊する昆虫のエコーは検出できていないことがわかった。夏期は地上付近に多数のハエが発生するが、これらは上空に浮遊して移動することはないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の初年度であった2018 (H30)年度は、当初予定していた通り、晩夏の空中浮遊物の採集実験を実施した。また、本課題研究の開始前までに行った春・秋・冬の季節の空中浮遊物採集の予備実験結果と比較などを進めた。2019 (H31,R1)年度はこれら観測結果についてさらに詳しい解析を行い、大気浮遊物体の空間密度と風速・風向、高度の関係などを多岐にわたって比較考察を進めた。さらに視野を拡げ、北極観測基地に設置している同型装置 FALCON-A のデータについても比較解析を行い、北極域では夏期においても空中浮遊物はほとんど存在しないことが示唆された。 ここまで順調に研究が進展していたが、3年目の当初予定最終年度の 2020 (R2)年度は、コロナウィルス感染防止の措置により、大学構内の入構制限などで、フィールド実験の準備・実施ができなかった。そこで、研究期間を 2021年度まで延長した。2021 (R3)年度は、千葉での FALCON-I の観測と共に、北極域に設置した FALCON-A の観測データの蓄積もありその結果も併せて解析・考察を行うことで、全く異なった環境と気象条件のもとでの大気浮遊昆虫の比較など、視野を拡げた研究に進展できたといえる。この意味で、コロナウィルス感染の影響で研究期間の延長を余儀なくされたが、一方で新たな観点で研究を進展させることができていることから、「挑戦的研究(萌芽)」としては「(2)おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018(H30), 2019(H31,R1)年度は前述のように晩夏の空中浮遊物の採集実験を実施するとともに、本課題研究の開始前の2017年度までに行った春・秋・冬の季節の空中浮遊物採集の予備実験結果と比較や、地上から上空までの風の様子との比較考察などを進め、前述の結果などを導いた。2020 (R2)年度は、コロナウィルス感染防止の措置により、大学構内の入構制限などで、フィールド実験の準備・実施ができなかった。また、北極基地におけるデータの解析も必要性が増した。研究期間の延長を行った 2021 (R3)年度は、長引くコロナウィルス感染拡大の影響で空中浮遊物の採集実験の実施には至らなかったが、千葉大での FALCON-I での観測と共に、北極域での FALCON-A の観測結果を合わせて、これまでに得られたデータの解析を行い、空中浮遊昆虫の気温・天候との関連などを調べた。 期間再延長をする 2022(R4)年度は、さらに地上および上空での気温・風速・天候と大気浮遊昆虫等の空間密度、その季節・時間変化について総合的に調べ、結果を論文等でまとめ発表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2020(令和2)年度当初からのコロナウィルス感染防止措置で、大学構内の入構規制などにより、フィールド実験等に大きな制限が生じ、計画実施の延期をしたためである。さらに 2021(令和3)年度もコロナウィルス感染拡大の影響が続いたため、大気浮遊昆虫の捕虫調査などのフィールド実験に替えて、ミリ波レーダ FALCON-I による千葉での大気浮遊昆虫等の詳細特性を解明するための観測を進めるとともに、北極域での FALCON-A による観測も併せて、データ整理・解析を進めてきた。2022(令和4)年度はこれらの観測・解析を進めて研究期間全体のまとめを行い、これらの研究成果発表を行う。次年度使用額は観測・解析の経費と発表論文投稿・掲載料などの費用に使用する。
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Research Products
(40 results)