2018 Fiscal Year Research-status Report
デグロンシステム導入マウスを用いた新規がん治療システムの構築
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18K19269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 雅秀 京都大学, 医学研究科, 教授 (50251450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 智恵 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30372486)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | デグロン / PD-1 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫細胞上にあるPD-1受容体はPD-L1タンパク質と結合すると細胞傷害活性を抑制し自己免疫疾患を防止する。一方,がん細胞上にPD-L1が発現している場合,PD-1の有する細胞傷害活性抑制機能により,がん細胞を排除することができず,がんが増殖してしまう。現在行われている治療法は,抗PD-1抗体を投与してPD-1とPD-L1の結合を阻害する方法である。しかしながら,現時点で高額な医療費がかかり,再発した場合には同じ治療を繰り返す必要があるため患者の負担が大きい。また,抗PD-1抗体投与により,がん細胞のみならず正常細胞をも傷害してしまい,自己免疫疾患を発症する例がある。そこで,免疫細胞上のPD-1を時期特異的に分解できるようなシステムが構築できれば,これらの問題点を解決できる新しい治療法開発につながるのではないかと考えた。本研究では,デグロンシステムを用いた新規がん治療システムの構築を目的とし,現行治療法の課題点を解決できうる新規治療法の開発につなげる。まず,生体内でデグロンシステムを機能させる系を構築した上で,がんを排除するシステムを構築する。次に,造血幹細胞を遺伝子改変し,タグが導入された細胞をレシピエントマウスへ移植する。生着後,PD-L1陽性がん細胞株を移植し,最適な条件で薬剤Xを投与した場合と,投与しない場合とでがん細胞の増殖を比較する。また,がん細胞が排除できたら,再発を模した実験として2,3ヶ月後にもう一度同じがん細胞を移植し,再び排除することができるかどうかを調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デグロンシステムを用いたがん治療モデルマウスの開発のために,主に2つの研究を行った。(1)T細胞の細胞傷害性を抑制する分子として知られるPD-1に,蛍光タンパク質であるmCherryおよび薬剤Xによってプロテアソームにタンパク質が輸送され分解されるためのタグTを融合させたPD1-mCherry-Tを発現するT細胞リンパ腫株を作製した。蛍光顕微鏡下で観察した結果,PD1-mCherry-Tタンパク質は細胞質および膜に局在していることが確認された。また,フローサイトメトリーによる解析から,PD1-mCherry-T融合タンパク質が野生型のPD1同様,膜上に発現しており,薬剤Xを加えることでPD-1およびmCherryの発現が低下することがわかった。Western blottingによる解析でも,薬剤XによってPD-1およびmCherryの発現が低下することが示された。(2)PD1-mCherry-T融合タンパク質を発現するマウスを作製した。受精卵におけるゲノム編集技術で作製することが困難であったため,従来の方法である,遺伝子操作を行ったES細胞より作製した。ヘテロ接合体の生体は,生後より半年齢まで,外見上野生型と違いがなかった。ホモ接合体も期待通りの数が得られており,離乳までの発生には問題がないと考えられた。ヘテロ接合体より調製した脾臓細胞は期待通りの結果が得られたので,おおむね順調に遂行できていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤Xを添加した時に免疫細胞でmCherryおよびPD-1が分解される最適な条件を探索する。造血幹細胞の内在性PD-1とmCherry,デグロンタグが融合タンパクとして発現されるように,c-kit陽性造血幹細胞を遺伝子改変し,タグが導入された細胞をレシピエントマウスへ移植する。生着後,PD-L1陽性がん細胞株(EL4など)を移植し,薬剤Xを投与した場合と,投与しない場合とでがん細胞の増殖を比較する。また,がん細胞が排除できたら,再発を模した実験として2,3ヶ月後にもう一度同じがん細胞を移植し,再び排除することができるかどうかを調べる。マウス造血幹細胞での実験系がうまく機能したら,臍帯血由来CD34陽性ヒト造血幹細胞を用いて,ヒト細胞の生着が可能な重度免疫不全マウス(NOGマウス)に移植して同様の実験を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度は主として培養細胞レベルの解析を行ったので,それほど予算を使用しなかった。PD1-mCherry-T融合タンパク質を発現するマウスが作製できたので,2019年度はマウスを用いた解析が中心となるため,その飼育経費などの経費が必要となる。
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