2018 Fiscal Year Research-status Report
多細胞シアノバクテリアが持つ水陸両用運動装置の解明
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18K19338
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白石 英秋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90202118)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 細胞運動 / スピルリナ / 微生物 / 原核生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
Arthrospira platensis(通称:スピルリナ)は、多細胞の繊維状シアノバクテリアである。この生物は水中を移動することができ、また、陸上でもスムーズな滑走運動を行うことができる。この生物の個体は数百個の細胞が1列に並んで形成されているが、細胞の表面には線毛や鞭毛のような構造は見られず、これらの細胞が、どのようにして協調してスムーズな個体の運動をもたらしているのかは謎である。この生物を用いて、環境条件を変えた際の運動の解析や、形態が物理的あるいは遺伝的に改変された個体を用いた運動の解析を行い、この生物の滑走運動に影響を与える環境要因と構造的要因を明らかにした。また、運動機能に欠損が生じて動くことができなくなった突然変異体を、効率よく選別する系を確立した。さらに、得られた突然変異体の1つについて、復帰突然変異が比較的高頻度で生じることを見出し、その株を用いて複数株の復帰突然変異体を単離した。これらの復帰突然変異体とその親株は、運動に関わる遺伝子のみに遺伝子構造の違いがある可能性が高く、突然変異の原因遺伝子の同定に有効であると期待される。A. platensis は増殖の過程で酸性多糖を多量に分泌するため、ゲノムDNAを調製する際にゲノム標品に多量の酸性多糖が混入する傾向がある。それらの酸性多糖はDNAの調製の際にDNAと類似した挙動を示すことが多いため、従来、DNA標品から簡便に除去することは困難だった。このような酸性多糖がゲノムDNAの標品に含まれていると、塩基配列の解析などを妨げることがある。この問題を解決する過程で、有機溶媒による抽出を組み合わせることで比較的簡単に酸性多糖を除去できることを見出した。この手法は、この生物でゲノム塩基配列の解析を行う際に有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動機能に欠損を持つ突然変異体の単離法に改良を加えて、運動機能に関する突然変異体を極めて効率よく分離する手法を開発することができた。その系では、運動機能が回復した復帰突然変異体についても効率よく単離でき、突然変異体を用いた運動機能の解析を効率化できるようになった。また、A. platensisのゲノムDNAを調製する際にゲノム標品に混入する酸性多糖を、効率よく除去できる抽出条件を見出した。条件はもう少し検討する余地があるが、今後、改良された条件を用いて、A. platensisのゲノム解析を効率化できるものと期待できる。また、機能欠損の原因遺伝子の同定には遺伝子の導入による相補実験が有用であるが、A. platensisは多数の制限酵素を持っており、それらが、細胞に導入された外来DNAを分解してしまう。細胞抽出液にどのような種類の制限酵素が含まれているかを解析し、その一部について塩基配列特異性を決定した。運動機能の欠損の原因遺伝子の同定については進行中であるが、種々の実験手法の整備を進めることができ、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
突然変異体のゲノム塩基配列を次世代シークエンサーで決定し、親株(野生株)のゲノム塩基配列と比較することにより、運動に関わる遺伝子の候補を絞り込む。候補が絞り込めたら、それらの野生型の遺伝子を突然変異体に導入し、表現型を相補できるかどうか調べる。動けない突然変異体の表現型を相補できれば、その遺伝子が運動に関わる遺伝子産物をコードしていることが確定できるはずである。このような実験により、 運動装置を構成するタンパク質の遺伝子を同定していく。なお、この生物は内在性の制限酵素を持っているため外来のDNAの導入効率が極端に低いが、相補実験にはDNAの導入が必要なため、その効率の改善も並行しておこなっていく。
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Causes of Carryover |
ゲノムの塩基配列の決定がまだ途上のため次年度使用額が生じた。翌年度に塩基配列の解析費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)