2020 Fiscal Year Research-status Report
先進的プログラム構築方法論に支えられた高機能な3D印刷造形技術の開拓
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18K19788
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 和紀 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10257206)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 3D印刷 / 先進ソフトウェア技術 / 部品化・組合せ技術 / 造形パラダイム / 高水準モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,熱可塑性樹脂を用いた積層型3D印刷のための要素技術の有効性確認を主目標に,以下の研究開発を実施した.
(1) 大規模構造物の構築技術.土木および建築分野のトラス構造を参照しつつ,長尺のチャネル材を代替するビーム材の設計と試作を行った.寸法精度や強度等の要請からPETG系の素材を用いて,連結・分解が可能で必要な強度をもつビームを,アルミチャネル材の半分以下の重量で作成できる見通しを得た.また設計のパラメタ化を部分的に実現した.構築においては日本伝統建築の継手手法が非常に有効であることを確認した.今後さらに最適化の余地があるが,立体トラスを含む多様な構造への展開の足がかりを得ることができた. (2) 大型プロッタ用ヘッドの設計と構築.前年度設定した,大型ホワイトボードの垂直面で動作するプロッタの構築という課題に対し,ペンとイレーザを搭載可能なプロッタヘッドの試作を行った.プロッタヘッドは複雑な形状と多くの可動部品からなり,交換可能かつ印刷容易な部品から構成するという方針に基づいた結果,約50点の3D印刷部品からなる構成となった.本作業を通じて,(項目(1)で制作した)レールに搭載したヘッド全体のスムーズな移動,構成要素の並進動作や弾性保持,摩擦の最小化などの課題の洗い出しを行った.体系的設計論は今後の課題となったが,ソフトウェアにおけるアジャイル開発に近い開発方法論の有効性を確認した.
これらを通じ,実際的な機能部品および多数の部材の組合せが必要な大規模構造物を支えるモジュール化技術およびソフトウェア技術の洗い出しを進めることができた.これとは別に,学部学生実験の自宅展開に利用する機械部品多数(二百数十点)の設計制作を,成果展開の一環として行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当年度はコロナウィルスの影響で,研究教育環境全体に急激な変化があり,それに対応する新たな枠組の構築が重要かつ緊急の課題となった.この中で,研究においても教育においても学生にかかわる部分を最優先で整備する必要があったため,個人ベースの作業項目は優先度を下げなければいけない状況であった. 本研究課題については,複数台の3Dプリンタ本体や各種計測機器を用いた実験がほぼ不可能となり,基本的に自宅の3Dプリンタ1台によって進めることとなった.研究協力者となる学生の確保も困難となり,学生を交えての議論は年度後半は週1回のペースで継続できたものの,挑戦的課題への取り組みには至らなかった. 技術的には,上記に起因する研究の量的不足のために,知見の蓄積に基づく技術の体系化に遅れが生じた.これには,本研究課題が,体系化可能と考えられる部分に加え,体系化が難しく個別知見の蓄積によらざるを得ない部分が少なくないことも影響している.
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Strategy for Future Research Activity |
多様な組合せ技術に基づく系統的な機能部品造形法の確立とその有効性の実証を目指して,現行の研究環境の中で可能な限り造形実験を進め,得られた知見やデータの整理と機能部品のライブラリ化を推進する. 前項で述べたように本技術は,パラメタ化などの方法で体系的できる部分と,知見の積み上げに委ねるべき部分があるため,両者の切り分けを行ってそれぞれを推進する.その中で今後は,パラメタ化できる部分については設計最適化技術の適用を図ってゆく.知見の積み上げに委ねるべき部分については,ソフトウェアにおけるデザインパターン集を参考に,パターンの整理と有効性確認を図ってゆく.モデル記述言語においては,プログラミングおよびモデリング言語の設計・実装経験と知見を活かして,制約処理技術の導入を順次進めてゆく.
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Causes of Carryover |
多くの活動を制限せざるを得なかったため,旅費や実験費用などが当初の計画を下回った.次年度使用額については,主に評価実験の推進のための材料費および謝金にあてる.
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