2018 Fiscal Year Research-status Report
腸内環境も勘案したミクロシスチン低濃度曝露による慢性中毒発症機構と緩和法の検証
Project/Area Number |
18K19854
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10547532)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (00271627)
清水 和哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10581613)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | コレステロール代謝 / 腸管機能異常 / ミクロシスチン-LR / Sirt1 / AMPK / 抗癌剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
湖沼の富栄養化に伴い発生するアオコが産生する毒素ミクロシスチンは、飲料水のみならず、淡水魚介類を食すことで、人体に取り込まれる可能性が指摘されている。ミクロシスチン研究におけるこれまでの健康評価は、急性中毒を想定した高濃度のミクロシスチン曝露に対する解析が主であり、低濃度曝露による慢性中毒に焦点を当てた報告は稀である。そこで本研究では、毒性の最も強いミクロシスチン-LRを用いて、低濃度曝露による影響を解析することを目的とした。 まずラットに、ミクロシスチン含有水を7週間自由飲水させたところ、コントロール群と比較してミクロシスチン群で、ASTは減少傾向、ALTは優位に減少していた。一方、ミクロシスチン群で、肝臓中の総コレステロール量は有意に増加していた。その他の項目に関しては、両群の間で有意な差は認められなかった。以上の結果から、慢性的なミクロシスチンの低濃度曝露は、コレステロール代謝の破綻を起因とした脂質代謝異常を惹起することが示唆された。 培養腸管細胞に対して8日間、WHOの規定内の濃度でミクロシスチン-LRを処理したところ、腸の恒常性維持や分化誘導に関わる細胞内シグナル伝達分子および転写因子の作用経路に破綻が生じていた。よって、たとえWHOの規定内の濃度であっても、慢性的にミクロシスチンを摂取することで、腸管機能異常を介した健康障害を引き起こす可能性が示唆された。 培養肝癌細胞に対するミクロシスチン-LR処理は、AMPKの活性化を介したULK1の活性化とSirt1の発現上昇を導いた。肝癌におけるオートファジーの誘導やSirt1の発現上昇は抗癌剤への抵抗性を付与するとの報告があるため、ミクロシスチン-LRにより抗癌剤に対する抵抗性が導かれる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに得ている成果をまとめ、現在、論文を投稿準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
飲水を介したミクロシスチンの慢性的な低濃度曝露は、ラット肝臓におけるコレステロール代謝の破綻を引き起こした。そのため今後は、コレステロール代謝に関与する遺伝子群の発現変化について解析を行い、合わせて作用メカニズムの検証も行う。加えて、消化管の機能異常や腸内細菌叢の変動に対する影響についても調べていく。 培養腸管細胞については、引き続き、腸の恒常性維持や分化誘導の異常にミクロシスチン-LRがどのように作用しているのか解析を進めていく。 培養肝癌細胞については、ミクロシスチンが抗癌剤抵抗性を惹起するのか、シスプラチンやソラフェニブを用いて検討を行う。
|
Research Products
(2 results)