Research Abstract |
申請者は,CO_2をLewis酸で活性化し,有機化合物へ親電子的に固定化する方法について研究しており,AlBr_3の存在下,トルエンのCO_2によるカルボキシル化が,過剰量のMe_3SiXの添加により著しく促進されることを見出している。本研究の目的は,本反応の反応機構を検証し,その原理を抽出して新しい高度分子変換法へ展開することであり,今年度は,下記の成果を得た。 1.種々のハロゲン化シランを用いて,トルエンのカルボキシル化を行った。その結果,活性化効果はハロゲン化シラン上の置換基により大きく変化し,アルキル基よりもアリール基が良く,Ph_3SiClでは1当量の添加で,ほぼ定量的に反応が進行することがわかった。また,シリルアミンを添加剤とする反応,(p-CH_3C_6H_4)Ph_3Siを基質とする反応の結果から,本反応は,Lewis酸によるタンデム型Friedel-Craftsシリル化-炭酸化の機構ではなく,シリル化剤がLewis酸として作用して活性種と考えられるCO_2-Al錯体をよりいっそう活性化し,一段階で炭酸化が進行していることが示唆された。また,ハロゲン化シランの回収実験や^1H NMRによる分析から,用いたハロゲン化シランは反応によって消費されるのではなく,触媒的に作用していることがわかった。今後さらに,錯体のキャラクタリゼーションにより反応機構を明確にし,新しい反応へ展開していきたい。 2.シリルアミンとAlBr_3の組み合わせで,N-メチルインドールのFriedel-Craftsシリル化が起こることを見出した。 3.チアカリックス[4]アレーンをベースとしCO_2の二つのカルボニル基に同時に二点配位できるようにデザインした四核Ti(IV)錯体を調製するために,二つのモノアミノチアカリックス[4]アレーンをアミノ基で連結したビスチアカリックス[4]アレーン類の合成法を確立した。
|