Research Abstract |
本研究の目的は,インターネット上の3次元マルチユーザ仮想環境を利用したコミュニケーション・システムを,がん患者のためのサポートグループに導入し,それが,患者のメンタルヘルスに及ぼすポジティブな効果,さらにコミュニティの形成に及ぼす効果を解明することである. 本年度は,3次元仮想空間(VR)コミュニケーション・システムをがん患者コミュニティに導入することによる,相互援助ネットワークの形成過程と発話内容を分析した.参加者はインターネットを通してアバターによるチャットをおこなった.チャットは1週1回1時間半のペースで2-6名が参加して行われた.コミュニティのスタートから,3年3ヶ月間の4つの時点の計7915の発話を,匿名化処理をした上で,テキストマイニングによって分析した結果,以下のことが明らかになった. 第1に,開始から10週まででは,患者とファシリテータの発言比率は約50%ずつであり,患者からファシリテータへ発言をする機会が多かった.しかし,2年後以降では,患者の発言比率が約90%になり,患者同士のみで,活発に会話が行われるようになった.また,ファシリテータが会話に参加しない場合には,開始時は参加者の発言が分散する傾向にあるが,時間経過につれ,古くからの参加している特定の患者へ発言が向けられる機会が増え,ファシリテータ的役割を果たすようになることがわかった. 第2に,会話に出現する感情語の出現頻度に基づいて,コミュニティ形成に伴う発話全体の感情語の出現比率の推移を分析した結果,コミュニティの成熟によって,発話の内容に,質的な変化が見られ,不安(例:怖い)・倦怠(例:だるい)に関わる発言が減少し,快(例:元気)や親和(例:好き)に関わる発言が増加した. 第3に,発言間インターバルが長くなると,自身の病気に関するような答えにくい発言,話題がかわされていることがわかった.
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