2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリCagAの分子構造と病原生物活性の関連
Project/Area Number |
19041004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 秀明 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (20311227)
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Keywords | 感染症 / ヘリコバクターピロリ / 細胞極性 / 分子立体構造 / キナーゼ |
Research Abstract |
1)これまで困難とされてきたCagA全長タンパク質(約140kDa)を異所性に可溶性タンパク質として大量発現させることに成功した。アフィニティクロマトグラフィー等により組換えCagAの精製を行い、銀染色ゲル上で単一バンドとして確認される精製タンパク質、約200mgを得る事に成功した。NMR解析に用いるCagA分子内領域を決定するに当たり、プロテアーゼ分解法によりドメイン構造解析を行った。その結果、CagAはEPIYA繰り返し領域近傍で分子構造が二分されていることが明らかとなった。In vitroの分子再構成実験により、二分された個々のドメインが強力に分子内相互作用している可能性が示唆された。EPIYA領域を含むC末端側ドメインのNMR及びCD解析を進めたところ、高次構造の存在が示唆された一方で、不規則構造の存在も併せて観測された。CagAは主要な生物活性に重要なEPIYA領域周辺を不定形構造として持つ内因性不規則構造タンパク質であることが推察された。 2)cagA遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを樹立し、個体レベルにおけるCagAの病変発症への関与を検討した。その結果、cagAトランスジェニックマウスにおいて胃上皮細胞の過増殖にともなう胃粘膜肥厚ならびに過形成性ポリープ、さらには胃ならびに小腸における癌の発症を認めた。 3)胃上皮AGS細胞にCagAを発現させ、EPIYA領域に相互作用を示す細胞内タンパク質を質量分析法により同定した。その結果、CagAは細胞極性制御因子PAR1キナーゼとEPIYA配列近傍の分子構造に依存して複合体を形成し、PAR1キナーゼ活性の抑制を通して細胞極性形成を崩壊させることが明らかとなった。このCagA分子活性に依存し、CagA陽性ピロリ菌は胃上皮組織構造を破壊し胃粘膜病変を発症させていることが推察された。
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Research Products
(8 results)