2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞核で持続感染するマイナス鎖RNAウイルスの複製基盤の解明
Project/Area Number |
19041038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 Osaka University, 微生物病研究所, 准教授 (10301920)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / RNA ウイルス / 細胞核 / 持続感染 / クロマチン |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)は、レトロウイルスを除く動物由来RNAウイルスの中で、唯一、細胞核で持続感染する。これまでに、BDVのリボヌクレオ蛋白質複合体(RNP)が細胞周期を通じて染色体に接合し、ゲノムの安定化を図っていることを発見している。しかし、極めて動的なクロマチン上で、RNPがどのように安定化や複製を制御しているのかについては謎である。本研究は、宿主染色体の活動を巧みに利用したRNAウイルスの複製基盤を明らかにすることを目的に解析を進めている。本年度は、クロマチンに接合しているRNPの安定化と複製制御機構を明らかにする目的で、宿主因子High mobility group box 1 protein (HMGB1)の関与を解析した。HMGB1をノックダウンしたBDV持続感染細胞では、クロマチン上のRNP量が減少することが明らかとなった。一方、BDVmRNAの発現レベルも低下することが明らかとなり、HMGB1はBDVの転写活性にも影響することが示唆された。パルス・チェイス解析の結果、クロマチンに結合しているRNPの代謝回転は、HMGB1ノックダウン細胞で有意に早いことが示された。さらに、生細胞でのHMGB1の動態を観察した結果、HMGB1とPは、クロマチン結合RNPへの一時的な局在を繰り返していることが示された。HMGB1ノックダウン細胞では、RNPへのPの滞在時間に変化が見られたことより、HMGB1はPとクロマチン結合RNPとの相互作用に関与することが示唆された。これらの結果より、BDVは宿主のクロマチン再構築機構を利用することで、クロマチン上のRNPの構造変化を誘導し、その安定化を図っていると考えられた。本研究により、細胞核におけるRNAウイルスの持続感染機構と複製制御機構が明らかになった。
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