2009 Fiscal Year Annual Research Report
脆弱化した図書・文書資料の非破壊劣化度評価と新規強化処理法の開発
Project/Area Number |
19200056
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
園田 直子 National Museum of Ethnology, 文化資源研究センター, 教授 (50236155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 真吾 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (40270772)
岡山 隆之 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (70134799)
大谷 肇 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (50176921)
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Keywords | 酸性紙 / 劣化度評価 / ローリングテスト / 物性試験 / 熱分解分析法 / 強化処理 / 脱酸性化 / 図書・文書資料 |
Research Abstract |
最終年度は、紙の劣化度評価法のさらなる検証を進めた。また、強化処理法としてはセルロース誘導体の有効性を見極めるとともに、ペーパースプリット法の原理を科学的に解明した。 紙の劣化度評価法のうちローリングテストはほぼ非破壊で実施でき、通常の物性試験では測定不可能なほど劣化の進んだ紙の劣化度評価に応用できる可能性を持つ。アコースティック・エミッションは最小限の破壊はあるものの、劣化度評価に有効である。熱分解分析法は、最小限のサンプル量を必要とするが、単に劣化度評価法というだけでなく、これにより劣化機構の違いが解明できることが示唆された。 セルロース誘導体による強化処理の最終実験を、人工的に異なるレベルに劣化させた試験紙を対象に実施し、強化剤塗布前後の試験紙の劣化度(強化処理の有効性の確認)、強化処理後の試験紙の加速劣化前後の劣化度(強化処理の劣化抑制効果の確認)を、ローリングテスト、アコースティック・エミッション、熱分解分析法、そして物性試験により比較検証した。セルロース誘導体による強化処理は、劣化の進んでいない試料ほど、脱酸性化剤を併用した場合に劣化抑制効果を発することが明らかになり、この処理は状態の良い酸性紙に対する予防保存的措置としての意義が高いことが分かった。 一方、ペーパースプリット法の原理解明として、サポート材として使用する不織布の材質、接着剤として用いるゼラチンの濃度、および機械の速度が処理に与える影響を検証するとともに、強化処理前後ならびに加速劣化前後の紙の物性を比較検証した。ペーパースプリット法は、劣化の進行した試料に対しての補強効果が高く、また劣化抑制効果が大きく、対処療法という位置づけが明確になってきた。 研究成果は国内外の学会誌や学会で積極的に発表するとともに、研究成果の社会還元として基礎的ならびに最新の情報を集約した「紙と本の保存科学」を刊行した。
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Research Products
(15 results)