2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカ・ナショナリズムの複合的編制をめぐる学際的研究
Project/Area Number |
19201049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古矢 旬 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90091488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 文明 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00126046)
大津留 智恵子 関西大学, 法学部, 教授 (20194219)
橋川 健竜 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30361405)
廣部 泉 明治大学, 政治経済学部, 教授 (80272475)
常本 照樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10163859)
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Keywords | ナショナリズム / 帝国 / 宗教 / 憲法 / 国際比較 |
Research Abstract |
本プロジェクトは最終年を迎えた。アメリカ政治社会において過去一年間は、一昨年華々しく登場したオバマ政権の「チェンジ」や改革的施策に対する逆行の目立つ、新たな政治的「保守化」傾向が顕在化した時期であった。2010年秋に実施された中間選挙では、2008年大統領選挙においてオバマ率いる民主党に一蹴されたはずの、共和党右派勢力が「茶会運動」という新たなポピュリスト的民衆運動に便乗する形で息を吹き返したかにみえた。しかし「茶会運動」の最も一貫した中核的なメッセージが「反税」すなわち「政府からの経済的自由」にあることに着目するならば、それはやや古風なレッセ・フェールや人民主権論に立脚するとはいえ、「自由と民主主義」に集約される伝統的な政治文化の再強調の動向であることに間違いはない。 このようなアメリカ政治の展開は、本プロジェクトの主題であるアメリカ・ナショナリズムが、今日もなお18世紀的自由主義イデオロギーの古層を秘めていることを伺わせるに十分な契機である。ポスト冷戦期、さらには21世紀の世界が、政治、経済、文化の様々な局面でグローバル化をとげ、それに応じた新たな自由主義が求められている一方で、グローバル化の震源地であるアメリカにおいては、地殻変動の結果、あたかも太古の結氷の下から18世紀の古色蒼然たるレッセ・フェールが再び現出してきたかのようである。このような複雑で多層的なアメリカ政治状況の現出により、アメリカ・ナショナリズムはますますその多面性複合性の度を加えている。 こうした状況を背景に、本プロジェクトは本年度、2回のシンポジウム(11.13、12.11)と5回の研究会を実施した。いずれも複数の国からの報告または参加を含むものである。これらの研究会、シンポジウムの成果と、これまでの共同研究、各分担者の個人研究の成果とを踏まえ、本プロジェクトではCPASとも協同して、『アメリカ・ナショナリズムの歴史と現在』、『「アメリカ帝国」論の射程』、『21世紀のアメリカ研究』の3冊からなる叢書の刊行計画に着手している。
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Research Products
(26 results)