2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本における木の造形的表現とその文化的背景に関する総合的考察
Project/Area Number |
19202007
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
佐々木 丞平 Kyoto National Museum, 館長 (20144313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 大秀 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 部長 (90090927)
西上 実 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 上席研究員 (40142632)
久保 智康 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 工芸室長 (50234480)
淺湫 毅 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存修理指導室, 主任研究員 (10249914)
永島 明子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部列品管理室, 主任研究員 (90321554)
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Keywords | 日本文化 / 木彫 / 木製品 |
Research Abstract |
研究第2年度にあたる本年度(平成20年度)は、昨年度に引き続いて、これまで京都国立博物館が収集してきた京都社寺の所蔵品に関するデータを、専用のデータベースソフトに再整理の上、順次入力していった。これは将来的な外部公開を念頭に置いたもので、本年度まででおよそ2000件の人力が終了した。また、本科研による調査によってあらたに得られた静岡・建穂寺の所蔵品データも入力済みであり、これに基づく報告書が近日刊行予定である。このようなデータ整理は、基礎的作業ではあるが、樹木を素材・主題とした近代以前の美術工芸品を広範囲で対象する点で、かかるデータの共有は学問発展に大いに貢献すると考えている。 調査の面では、本科研では木にかかわる美術様式(特に彫刻の様式、あるいは用材といった点)を考える上で、静岡あたりを境とする東日本と西日本とでは差違が見られ、木に対する意識・文化の境界領域が、当地に設定されるのではないかという予測のもと、静岡を最初の調査対象地として選定し、初年度には建穂寺で調査を行なった。本年度は浜松の宝林寺、大雄寺で予備調査を行ない、次年度の本調査に備えた。また静岡との比較のために、やはり古代から仏教文化が花開き、古文化財の現存作例が多い山形・寒河江市、島根・出雲市でも予備調査を行ない、上記予測に関し有益な資料を得ることができた。寒河江における調査成果は、当館における同市熊野神社の神像展示に反映し、展示期間中に発行したワークシートにて、一般にも公開した。 このほか、京都国立博物館の文化財保存修理所において修理中であった香川県与田寺の不動明王立像について、修理の過程において、これが造像当初に頭部の向きを改造している可能性のあることが判明した。それを実証するために、当初の像容を再現する方法として、三次元計測を行ない、コンピューター上で再現を試みた。その結果、現在正面を向いている頭部が、当初はかなり左方に振っていたことを実証することができ、木彫像の像容決定と改変における貴重な史料を得ることができた。 海外調査では、ヨーロッパに伝存するわが国の漆工品の調査を行ない、わが国固有の木製品に対する美意識が、近世以降の欧米でどのように受け入れられたかという点に関して、貴重な史料が得られた。また、韓国における調査では、これまで彼我の共通性にのみ着目しがちであった従来の研究に対し、両者の木製品・木彫品に対する意識の差異という、これまでにない観点から調査することで、あらためてわが国特有の木に対する意識が浮かび上がってきた。このような視点は本研究の主たるテーマである、木の造形的表現とその文化的背景を考察する上で、有効な視点であると考えられ、次年度以降も、この視点から中国等との比較考察を行ないたい。
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