Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 信昭 富山大学, 文学部, 教授 (50206512)
貴堂 嘉之 一橋大学, 社会科学研究科, 准教授 (70262095)
清水 和裕 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (70274404)
石川 禎浩 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10222978)
大石 高志 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70347516)
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Research Abstract |
世界の諸海域世界(環シナ海世界,環インド洋世界,環地中海世界,環大西洋世界,環太平洋世界)のつなぎ目となった港市に着目し,そこに来航した人々と交流を持ち,外部世界と現地社会を仲介した奴隷・移住者・混血者の歴史的役割に光を当てる。とりわけ政治経済的変化が以前にも増して世界各地に連動し始めた近代移行期において,こうした奴隷・移住者・混血者が広域社会秩序や地域秩序の形成にいかに関わったのか,比較研究する。彼らの歴史的役割の解明をとおして,近代の国際秩序や民族意識が構築されるなかで,「人種」間や民族間における従属意識や「不平等」意識が顕在化する背景について検討する。 初年度となった本年度,計4回の研究会を持ち,本科件のテーマについてこれまでどのような研究がなされ,いかなる課題が出てきているのか検討した。また環シナ海世界の港市を研究するため,8月20日〜30日に本科研メンバー5名が,中国南部の上海,福州,泉州,アモイ,スワトウ,広州の港市を訪問調査し,さらに3月16日〜22日に研究協力者2名が,インドネシアのジャワ島北岸港市を訪れ,華人街やアラブ人街,ヨーロッパ人街などを訪問調査した。 以上の活動から,環シナ海や環インド洋の港市における外来者を現地社会と仲介した現地人妻妾や混血者の役割が,クローズアップされた。彼らが近代社会のなかで周縁化していくことが,明らかになるとともに,同時にそのなかで新たな社会統合の役割を担うことも議論された。また奴隷研究について,古代から近代までのその実態研究について,総合的に捉えるパースペクティブが開かれた。そのなかで,古代地中海世界やアメリカ大陸における奴隷の境遇を,固定的に捉える従来の研究への疑問が提示された。また中国調査において,港市と内陸部を結びつける河川ネットワークの重要性,インドネシア調査においては,ムスリムに改宗した華人系住民の役割の重要性が再認識された。
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