Research Abstract |
本研究における内生的要因分析については,(株)カネカにおけるビジネスモデルの検討を中心に行った。すなわち,プラットフォーム型,共同開発型,コモディティ型の3類型に分類される。最も持続的に競争優位を保持できるのが,プラットフォーム型である。すなわちエンドユーザのニーズを最終商品提供者(M)が吸い上げ,それを可能にする技術開発を素材メーカー(S)が行い,その素材を用いた汎用品を汎用品メーカー(P)が生産し,最終商品提供者に供給する,という仕組みである。Sの技術優位性,Mの顧客関係管理,Mのコスト削減が一体となって展開され,それぞれのプレーヤーにおける競合が参入しづらい協働システムが構築されている状況である。これに対して,共同開発型のそれは,SがMへの技術提供者になるのであるが,MはSだけに固執する必要はなく,コスト高になれば,Sに代わる技術提供者とも協働可能である点は,Sにとっては苦しいところである。また汎用型は,一時的な技術優位性は保持できても,安価な模造品に市場を奪われるリスクを抱えている。例えば,あのコエンザイムQ10という爆発的ヒット商品にしても,韓国や中国から模造品が出回りつつあり,よって価格競争力がなくなりつつある。 プラットフォーム型と共同開発型との違いは,Pの存在とも言える。MがPを内包している場合が,共同開発型になり,コスト削減の鍵をMが握ってしまうことになる。これに対して,Pが外部にある場合,素材開発から最終製品生産までの流れは,素材開発側のリーダーシップに委ねられ易く,そのため,Sにとってのプラットフォームが構築され易くなる,と言えよう。 次に外生的要因については,産業と地域における国際分業の仕組みについて調査を実施した。とりわけ,振興地(インド,ブラジル)は,インフラコストが安いだけではなく,消費地としての可能性を秘めている。今は,まだまだ先進国への生産基地といった色彩が強いが,こうした国々における特殊なニーズが吸い上げられることによって,グローバルニッチ戦略が構築かのうなように思われた。例えば,黒人向けのウイグは,黒人の髪の毛が直毛でないばかりか,切れ易いところから開発され,全世界にて供給されるグローバルニッチ商品である。
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