Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 一頼 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50142831)
淺田 孝幸 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10143132)
高尾 裕二 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60121886)
関口 倫紀 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (20373110)
椎葉 淳 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60330164)
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Research Abstract |
21年度の研究目的の中心は,コモディティ化が進みやすい川上産業(資源,素材)において確認された,ニッチ戦略の成功確率と事業成長性とのトレードオフ関係が,川下産業(家電,自動車)においてはどのように変化するのかを検証することであった。川上産業においては,特定顧客に密着し,そのニーズを吸い上げ,製品開発を行うことは,需要者側に囲い込まれるリスクがある。ところが川下産業の家電においても,供給者と需要者という関係ではないものの,OSやアプリケーションといったいわゆるプラットフォームと,製品が提供するサービスとの関係において,川上産業と同様のトレードオフ関係が確認できた。他方自動車産業においては,いまだ「統合型」の様相が強いものの,グローバルなコスト競争局面から,モジュール型の分業体制に徐々に移行し始めており,そのうえ電気自動車の需要増からこの流れはやがて加速していくことが確認できた。自動車産業についてより正確に記すれば,BRICS等の資源豊富国と資源に乏しい国との間でのニーズは異なってくるであろうことから,産業自体がグローバルなものからローカルなそれへと変質する可能性も否定できない。そのうえで,今年度の研究成果として特筆できる点を述べれば,これまでややもすれば,曖昧であった「ニッチ」概念を充実化させることに成功した点である。すなわちニッチ市場とは,特定市場におけるサブセット(下位市場)ではなく,特定の顧客がまずあって,そのニーズを吸い上げ製品開発していくうち,事業として存続しうる売上規模を獲得できるようになり,その状態を継続させていく間に,当該製品が属する市場において参入障壁が高い小市場を形成することが可能となり,そうした市場のことを意味する。したがって,重要なのは,既存市場のセグメント分析からニッチは形成できるものではなく,特定顧客といかに密接に結びつきうるのか,という点である。
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