Research Abstract |
ナノメカニカル構造の創製と機能化の研究計画に沿って,三次元ナノメカニカル構造としてナノ振動子を収り上げ,振動子構造の設計法,材料の選択・改質,機械振動特性の解明など,ナノ構造の創製と機能化のための基盤技術構築を進めた. (1)ナノ振動子に高い共振周波数・Q値特性を付与するためのナノ振動子構造設計の検討を進めた.具体的には,ナノ寸法音叉型振動子設計のための構造・特性解析を進めた.また,パラメトリック励振のナノ振動子への適用の研究に着手した. (2)微小サイズの自己検知型ナノ振動子の実現をねらって,FIB-CVD-DLCにピエゾ抵抗効果を付与する研究を進め,低温・長時間アニール処理によりこれが実現できる事を実証した. (3)原子サイズの究極ナノ振動子をねらって,極めて特異な物性を有するグラフェンの振動子適用を試みた.剥離法により作製した単層グラフェンを小孔上に架橋することでメンブレン振動子を作製し,AFMを用いていた振動特性測定法(前年の成果)の適用によりグラフェン振動子の共振特性測定に成功した. (4)これまでに知見を得た引張応力内在によるレゾネータ作製法として,電子ビーム・イオンビーム複合リソグラフィ技術を開発した.両ビームのHSQレジストへの侵入深さ大きな差異を利用して,電子ビームでベースを,イオンビームでビームを作製するプロセスにより,引張応力を内在したSiO2ナノビーム振動子の作製技術を構築した. (5)前年度の表面の疎水性・親水性の振助特性への影響評価に引き続き,レゾネータ表面近傍の結晶状態が共振特性に及ぼす影響について研究した.レゾネータ表面へのイオンビーム照射によって表層をアモルファス化し,アモルファス層の厚さが振動特性に及ぼす影響を調べ,アモルファス化(結晶性低下)がQ値を下げる事を明らかにした. (6)ナノメカニカル構造のセンシングデバイス応用として,連結微小共振器による高感度電荷検出に挑戦した.2つのビーム振動子の対称・反対称共振モードのアンバランスを巧みに利用して,常温大気中においても147個/√<Hz>という超高感度検出に成功した. 以上,これまで3年間の研究により,ナノ振動子の構造設計,3次元ナノ構造作製技術,共振特性測定法など基盤技術の構築に見通しが得られた.今後は,高感度・高速ナノレゾネータのセンシングデバイス応用の方向に研究を進める.
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