2009 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーにおける文化的行動の発達と新奇行動の流行現象
Project/Area Number |
19255008
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
西田 利貞 Japan Monkey Centre, 所長 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美知夫 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (30322647)
松阪 崇久 (財)日本モンキーセンター, 特別研究員 (90444992)
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Keywords | 文化的行動 / イノベーション / 流行 / 発達 / 学習 / エソグラム / チンパンジー / マハレ山塊国立公園 |
Research Abstract |
2009年度によく観察された新奇行動には、求愛誇示としての腰叩き、不安時の乳首押さえ、レモン採食時の口拭い、クマバチの巣に対する枝使用、などがある。「腰叩き」誇示の開始者は第1位雄のPMであるが、今季初めてこの誇示を示した9歳の雄はPMから学習した可能性が高い。「乳首押さえ」行動の開始者は現在第3位の雄である。今回、大人雄1頭、若者雄1頭、若者雌2頭で「乳首押さえ」を新たに確認した。これは新たな流行現象である可能性がある。しかし、実際に第3位の雄から学習したのかどうかは明らかではない。対角毛づくろいには、手掌と手掌を握り合うサブタイプがあり、これは昨年までは、Kグループから移籍したGWという大人雌のみで知られていた。ところが、2009年には最近GWと行動を共にするようになったXTという大人雌が、その息子と対角毛づくろいをした際、このサブタイプを示した。これは、個体から個体へ対角毛づくろいが伝播したことを示唆する証拠といえる。なぜなら、2007年にはXTは手掌型を示していず、またGWとの親しい関係も成立していなかったからである。今回初めて観察された新奇行動には、樹上でベッドを作り、その上で四足で何度も跳ぶ求愛誇示がある。若い大人雄が示し、発情雌が走り寄り、実際交尾が起こった。これは、Mグループでみられる「潅木曲げ」(クッション様のものを地上に作るだけの求愛誇示)とは明らかに異なるパターンである。この大人雄は若者期には「潅木曲げ」の求愛誇示しか示していなかった。父子関係の解明のためのDNA解析が進んでいる。チンパンジーの行動の包括的なエソグラムを作り、過年度に撮影したビデオを編集し、総数700に及ぶ映像エソグラムを完成した。3月末にテキストとDVD2枚を出版社(Springer Verlag)に引き渡した。これは、チンパンジーの行動の地域間比較を大いに刺激するだろう。
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Research Products
(17 results)