Research Abstract |
名人を超えるコンピュータ将棋の開発を進めた。ゲームプログラミング,高性能コンピューティング,探索アルゴリズム,データベース,機械学習技術等など,コンピュータに関わる現代技術の統合としての成果を一つのマイルストーンとして実現しつつある。囲碁や将棋といった長い歴史を有する伝統文化コミュニティが存在し,その中でも最高の位置を占める名人の技量に匹敵するコンピュータシステムを設計し実現することはそれ自体が大きなインパクトある研究成果と言える。同時に,コンピュータ将棋を題材として人工知能を開発することの意義を再吟味した。コンピュータ対名人の舞台を準備し,公開試合で相当レベルの棋士と対戦することで成果をアピールした。また,名人を超えた後のコンピュータの役割を検討した。名人を超えたコンピュータシステムを社会でどのように有効に役立てることができるかについても検討した。コンビュータ将棋のレベルが向上するにつれて,コンピュータの無機質的な要素が顕になり人間から敬遠される性質があることが分かった。さらに強くなることで,無機質的な性質が解消される可能性を見出すことができた。さらに,将棋や囲碁のような複雑なゲームの理論値を特定する方法を検討し,ゲーム理論値の推定法を提案し,同時に,ゲームを解くことの定義を確立し,その上で,ゲームを解くことの是非を考察した。一千年を超える長い歴史の中で洗練されてきたゲームは,公平性の原理が影響を及ぼし,その理論値は引き分けになるという予想を検討した。当該分野に広く長く影響を及ぼす予想となる。手番の概念を解消し,ストカスティック性を導入し適宜制御することで,一度解かれてしまったゲームを蘇生させるアイデアを検討し,ゲーム木探索理論,組合せゲーム理論,ゲーム理論の統括的な理論についての探究を進展した。
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