2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19300252
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
横井川 久己男 The University of Tokushima, ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (60230637)
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Keywords | 大腸菌0157 / マイクロ波 |
Research Abstract |
昨年度までの研究成果から、マイクロ波は大腸菌0157の有害機能を抑制すると考えられたため、大腸菌0157に対するマイクロ波の作用機構を検討した。まず、マイクロ波が大腸菌0157のベロ毒素(VT)量を低下させたことから、VT遺伝子mRNA量の変動を検討した。培養液にマイクロ波照射して培養温度を37℃に制御して通気撹拌培養した場合と、恒温水槽で37℃に制御して通気撹拌培養した場合では、大腸菌0157の増殖に大きな違いは見られなかった。しかし、VT遺伝子のmRNA量は、2つの培養条件で有意な違いが見られた。恒温水槽で温度制御した場合には、定常期に近づくにつれて、細胞あたりのベロ毒素遺伝子のmRNAレベルも増大したが、マイクロ波照射した場合には、このmRNAレベルの増加が遅延する傾向が見られた。このような細胞密度の増加に伴って細胞あたりの転写活性が増大する機構は、クオラムセンシングと呼ばれ、大腸菌0157が自ら分泌するホルモン用物質(オートインデューサー)の濃度を感知して作動する制御機構であり、マイクロ波照射はこのクオラムセンシング機構に何らかの影響を与えると考えられた。クオラムセンシングには、アドレナリン様物質が細胞表層のリセプター(QseC)に結合して作動する場合と、インドールやアシルホモセリンラクトン類が細胞内に直接侵入してSdiAタンパク質を活性化する場合があるが、ベロ毒素量の経時的変化と各遺伝子の転写レベルの解析から、インドールやアシルホモセリンラクトン類が作用する経路、特に不溶性SdiAタンパク質の可溶化にマイクロ波が影響を与えたと推定された。これらの成果はマイクロ波の有用性を示すだけでなく.ベロ毒素生産抑制のための新しい標的を示唆するものと考えられた。
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Research Products
(10 results)