2007 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪の酸素・水素同位体比を用いた日本各地における長期水循環変動の精密復元
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19310002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中塚 武 Hokkaido University, 低温科学研究所, 准教授 (60242880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光谷 拓実 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター・年代学研究室, 研究室長 (90099961)
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Keywords | 樹木年輪 / セルロース / 酸素同位体比 / 水素同位体比 / 気候変動 / 東アジアモンスーン / ENSO / 梅雨 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本各地の森林から樹木年輪試料を多数採取して、そのセルロースの酸素・水素同位体比を測定し、過去数百年から数千年間に亘る日本の気候変動、特に水循環の時空間変動を、1年単位もしくは季節単位で詳細に復元し、解析することである。3年計画の初年度である平成19年度は、年輪同位体比と気候要素の関係を日本各地で定量・定式化するため、まず年輪試料の広範囲での収集と過去100年間程度の同位体比の分析を進めた。年輪試料は、北海道、秋田県、岩手県、茨城県、長野県、富山県、奈良県、滋賀県、島根県、鹿児島県のものについて、新たに採取、もしくは日本各地の木材学研究室等に保管されていた試料を譲り受け、その処理・分析・解析を進めた結果、年輪の酸素・水素同位体比は、それぞれ、当地の夏季平均相対湿度(降水量)、夏季平均気温を反映すると共に、積雪地域では冬季降水量や冬季気温の影響も受け、年輪同位体比から、それら夏・冬の両季節の気候因子の復元が可能であることが明らかとなった。北海道・幌延町のミズナラ、長野県・上松町の木曽ヒノキ、鹿児島県・屋久島の屋久杉の各試料については、更に、本来、第2年次の課題であった過去数百年間の年輪の酸素・水素同位体比の分析も、先行して進めた。その結果、地球温暖化に伴う長期の気温上昇や相対湿度の低下が確認されると共に、日本の夏季モンスーン(梅雨)とエルニーニョ南方振動の間にあるテレコネクション関係が、40年周期で規則的に逆転していることなどが、全く新しく発見された。これらの知見は、日本における梅雨前線活動の長期変動予測などを行っていくうえで、極めて有用であり、今後、気候力学的な詳しい解析に供していく必要がある。
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Research Products
(6 results)