Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 周作 大阪市立大学, 理学研究科, 教授 (30047394)
南 武志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00295784)
長岡 信治 長崎大学, 教育学部, 准教授 (80244028)
國分 陽子 日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (10354870)
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Research Abstract |
長崎市は明治維新以降,造船業等の重工業が急速に発展してきた都市であり,市街地を含む周辺地域は古くから人為的環境汚染にさらされてきたと考えられる.一方,1945年に世界で唯一プルトニウム原爆による被爆を受けた都市でもある.本研究では,環境汚染物質の最終シンクである水圏底質中に記録された環境汚染の履歴を時系列解析することによって,環境汚染と人間活動の関係を定量的に解析すると共に,環境汚染物質の動態を明らかにすることを目的に研究を進めた.平成19年度には長崎湾から底質コア試料を採取し,堆積年代,放射性核種,重金属元素,球状炭化粒子,POPs類,鉛安定同位体,花粉化石等の分析が研究分担者,協力者によって開始された.平成20年度は,これらの分析を継続すると共に,すでに得られている長崎市西山貯水池(被爆時,周辺域に「黒い雨」が降り,また底質中には長崎原爆の痕跡が明瞭に記録されていることが明らかになっている)における人為的環境汚染の記録と長崎湾における環境汚染の歴史トレンドを相互に比較することで,長崎市の人為的環境汚染と人間活動の関係,及び長崎原爆が長崎市周辺の自然環境に及ぼした影響について議論を進めた.また,長崎地区の対象として,わが国において典型的な人為的汚染を受けている関西圏や首都圏等の水圏底質の解析も合わせて実施した.第二次大戦前から長崎市街地は銅,亜鉛,水銀,鉛等の重金属元素で汚染されていたことが確認された. 環境科学的観点から,自然環境中に残された長崎原爆の痕跡は極めて有用な時間マーカーとして利用できることが明らかになった.
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