2008 Fiscal Year Annual Research Report
自然レベル放射性炭素を用いた北極土壌微生物による新たなCO2放出メカニズムの解明
Project/Area Number |
19310015
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
内田 雅己 National Institute of Polar Research, 研究教育系, 助教 (70370096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 昌男 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 主任研究員 (50344289)
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Keywords | 環境変動 / 土壌圏現象 / 微生物 / 極域 / ノルウェー |
Research Abstract |
極北土壌には、地質時代から蓄積されてきた有機炭素(fossil organic carbon)が大量に存在している。温暖化は、気候変動に脆弱なこの炭素リザーバーを容易に不安定化させると懸念されている。本研究では、北極スピッツベルゲン島東ブレッガー氷河後退域における土壌内有機炭素の分解に関する温暖化の影響を調べるため、氷河末端から海岸へと至るおよそ2.6kmでライントランセクト法により、放射性炭素・安定同位体比分析に基づく土壌有機炭素のキャラクタリゼーションを行った。その結果、表層0-1cm深の土壌有機炭素の放射性炭素年代は、800-34,510年と、表層であってもfossil organic carbonの割合が多く、その割合は氷河末端に近いサイトほど高いことが認められた。一方土壌深層である30cm深と40cm深において採取した土壌内CO_2の濃度、^<14>C年代、δ^<13>C値についても調査した。土壌内CO_2の起源は、主に土壌微生物と根の呼吸で構成される。本調査地では、表層10cm以浅にしか根が分布していないことが確認されていることから、10cm以深のCO_2起源は主に微生物呼吸によると考えられる。その一方、永久凍土の融解に際して脱ガスしたCO_2の寄与も考えられるが、本観測を行った8月は融解層の発達は小さい時期であることと、培養土壌からも長期的なCO_2放出が認められたことから、脱ガスの影響は大きくないと判断した。土壌内CO_2の濃度とδ^<13>C値は、30cm深で3.6%〜5.4%、-16.1‰〜15.5‰だった。一方、土壌内CO_2の^<14>C年代は、3,630-7,060年も古いことが判明し、微生物によるfossil carbonの分解が示唆された。
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