2008 Fiscal Year Annual Research Report
炭素・水素同位体比を用いたカナダ亜北極域における大気中メタンの変動に関する研究
Project/Area Number |
19310016
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
森本 真司 National Institute of Polar Research, 研究教育系, 助教 (30270424)
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Keywords | 温室効果気体 / メタン / 炭素同位体比 / 水素同位体比 / 北極 |
Research Abstract |
大気中のメタン濃度は、産業活動以降の人間活動の活発化によって急激に増加してきたことが知られており、二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体としてその動態が注目されている。しかし、メタンの放出源が有機物の嫌気性分解・化石燃料・バイオマスバーニング等多岐にわたることから、大気中メタン濃度の観測のみからその変動原因を明らかにすることは困難であった。メタンを構成する炭素・水素の同位体比は、それぞれのメタン放出源ごとに特徴的な値を示すために、メタン濃度と同位体比の同時高精度観測から大気中のメタン濃度変動原因に関する情報を得ることができる。本研究では、メタンの放出源の一つとして重要な湿地域を後背地に持つカナダ亜北極域ののマニトバ州チャーチル(北緯58度、西経94度)で採取された大気試料を用いて、メタン濃度とその炭素・水素同位体比(δ^<13>C、δD)を分析し、カナダ亜北極域でのδ^<13>C、δDの世界で最初の時系列データを得ると共に、その季節変化・経年変化を明らかにし、大気中のメタン濃度変動原因に関する知見を得ることを目的としている。 20年度は、前年度にほぼ高度化を完了した連続フロー式ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、カナダ環境省研究所がチャーチルで週に2度採取している大気試料のδ^<13>C、δD分析を継続し、2007年4月から現在に至るまでの高精度時系列データを蓄積した。初期解析の結果δ^<13>C、δDは共に明瞭な季節変化を示し、振幅はそれぞれ0.5-0.7per mil、10-20per milであることが明らかになった。また、7-9月には、湿地起源の同位体比的に軽いメタンの影響を強く受けたデータが得られている。今後、更にメタン同位体比の高精度観測を継続してデータの蓄積を図ると共に、メタン濃度の変動原因に関する解析を進める。
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