2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国大陸から風送された汚染黄砂による呼吸器疾患の増悪と日本におけるその疫学調査
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19310026
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
市瀬 孝道 Oita University of Nursing and Health Sciences, 看護学部, 教授 (50124334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 雅高 国立環境研究所, 環境分析科学研究室, 室長 (80228171)
今井 透 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00130146)
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (20322381)
岸川 禮子 国立病院機構・福岡病院, 内科・アレルギー科, 医長 (50450945)
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Keywords | 飛来黄砂 / スギ花粉症 / アレルギー増悪 / マウスモデル / 疫学調査 / 鼻症状 / 眼症状 / β-グルカン |
Research Abstract |
1. 壱岐に飛来した黄砂のマウススギ花粉症モデルへの影響を調べた。対照群(生理食塩水投与)、黄砂投与群(2μg/body)、黄砂投与群(20μg/body)スギ花粉(JCP : 10μg/body)投与群、JCP+黄砂投与群(2μg/body)、JCP+黄砂投与群(20μg/body)の計6群とし、1週間おきに4回点鼻投与した。鼻洗浄液中の炎症細胞数はJCP+黄砂群で増加し、黄砂の投与量が多いほど炎症細胞数が高かった。黄砂とスギ花粉点鼻後、20分間、花粉症の症状として鼻かき、くしゃみ回数を測定した。くしゃみ回数は各々単独投与群と併用投与群の間に差はなかったが、鼻かき回数がJCP+黄砂投与群で増加し、黄砂の投与量が多いほどその回数が高かった。この症状は鼻腔洗浄液中の炎症細胞数の増加と対応していた。In vitro実験において壱岐黄砂を用いて、抗原提示細胞の炎症惹起センサーのToll like Receptor (TLR)-2とTLR-4, NALP3-inflammasome、IL-1βを測定した。黄砂はTLR-2、NALP3-inflammasomeとIL-1Bの発現を高めた。このような結果から黄砂のアレルギー増悪作用は粒子に付着した微生物のβ-グルカンやペプチドグリカンが炎症惹起センサーを活性化し、Th2有意の免疫反応を誘導しているものと示唆された。 2. 昨年に引き続き北九州地域に居住する大学生約228人を対象に上気道の鼻、中気道の喉頭、下気道の気管支と肺の症状を中心に2月~5月末迄黄砂の健康影響調査を行なった。2009年の黄砂飛来日は2月12日、20日・21日、3月17日であった。228人のうち花粉症・鼻炎をもった対象者は38%であり、これら対象者の黄砂前2日、中、後7日間の症状の発生頻度は鼻症状:100%、眼症状:93%、咽喉頭・下気道:79%、日常生活支障:38%であった。この割合は花粉症を持たない対象者よりも高かった。本年の結果も昨年の調査結果(平成22年春季アレルギー学会にて発表)とほぼ同様であった。このような黄砂の健康影響調査から、黄砂は健常人よりもアレルギー疾患を持つヒトに影響が強く現れることが明らかとなった。 3. 壱岐に飛来した黄砂の微生物毒素成分を調べた結果、LPS量は僅かであったが、β-グルカンが高い値を示した。
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