2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19320025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 温司 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (50177044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 資明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60135499)
鈴木 雅之 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (50091195)
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Keywords | 肖像 / イコン / 類似 / イメージ人類学 / 美学 / 分身 |
Research Abstract |
本年度は主に、イメージ人類学的な視点に立って、「肖像」がいかなる役割を果たしてきたかに関して、研究発表会等を行ってきた。造形資料ばかりでなく、ギリシア神話や古典文学などから分かるのは、「肖像」がイメージの根源となってきたことである。プリニウスによれば絵画の起源は、戦地に赴く恋人の影をなぞったものだったとされる。つまり、不在を代替するものとして肖像は生まれたわけである。肖像はそれゆえ、ギリシア語で「ポトス」、ラテン語で「デシデリウム」と呼ばれる感情、つまり失ったものへの哀惜の念と深く結びついている。こうした肖像の人類学的な機能は、ギリシア神話やギリシア悲劇のテーマとしても何度か登場することが、研究協力者の発表等により明らかにされた。さらに肖像は、分身(ドッペルゲンガー)のテーマとも密接に関連している。この点に関しては、イギリス文学(たとえばオスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』など)やフランス文学(たとえばエミール・ゾラの『制作』など)に豊富な例があることが報告された。これらの文学作品において、肖像はしばしば、まるで生きもののごとく描かれ、モデルの主体にたいしてさまざまな作用を及ぼす。肖像の持つ不気味で魔術的な潜勢力は、これら文学作品によって見事に捉えられているのである。肖像の魔術・呪術に関しては、美学や図像学のみならず、人類学や精神分析などの観点からも、さらに突っ込んだ研究が必要となるだろう。最終年度である次年度の課題としたい。
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Research Products
(1 results)