Research Abstract |
第一に,研究代表者,分担者による資料収集と分析,ならびに2回の研究会,研究打ち合わせを通じて,ポスト産業化と生活実践の流動化・多様化について,理論,方法論面の検討を行った。その成果として,生活実践と資源,ならびに場所との関係において,産業化の過程とその後の過程で,次のような連続性と不連続性がみとめられる点が明らかとなった。まず連続性としては,(1)生産資源のみならず就労,教育機会等を含めた広範な生活資源へのアクセスが移動を動機付けており,他方で,特定の空間への持続的な定着を促進するような生活実践と場所との結びつきが必ずしも強くないこと,(2)産業化やグローバル化が生活資源の配置とそれへのアクセスに変化をもたらし,それが生活実践の流動化と多様化をより促進する方向に作用していること,が明らかとなった。次に不連続性としては,(1)産業化過程での移動では,特定の場所との関係も再生産されていたのに対し,ポスト産業化の状況では,場所との関係自体に変化が見られること,(2)それは,流動化の高まりと同時に,個化ともいいうるような社会ネットワークの狭まりと脆弱化をも意味するものであること,が特に重要であった。第二に,韓国での現地調査として,研究代表者,研究分担者,ならびに研究協力者2名が,次のような計5回の短期調査を行った。(1)地方から都市への移住者の生活構築と地域社会との関係(2回),(2)大都市近郊の産業拠点,(3)大都市居住中高年女性の生活,(4)産業化過程での民俗宗教の再編成。この成果を踏まえて,次年度以降,集中的な現地調査を行う予定である。
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