2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19330016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中森 喜彦 Kyoto University, 法学研究科, 教授 (40025151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒巻 匡 京都大学, 法学研究科, 教授 (50143350)
塩見 淳 京都大学, 法学研究科, 教授 (00221292)
高山 佳奈子 京都大学, 法学研究科, 教授 (30251432)
安田 拓人 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (10293333)
堀江 慎司 京都大学, 法学研究科, 准教授 (10293854)
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Keywords | 組織的犯罪 / 国際犯罪 / 不法収益 / 没収・追徴 / 刑罰権 / 共謀罪 / 犯罪団体 |
Research Abstract |
組織犯罪対策の一つである「共謀罪」の導入に関する論議の前提として、犯罪成立時期の包括的な早期化を巡る、従来のわが国の状況について検討を加えた。その結果、判例では、実行の着手に近接する時点で初めて予備の成立が認められる、などの謙抑的傾向が明らかとなった。「思想の不処罰」という原則を実質的に保障する観点からは妥当な方向であり、「共謀罪」の構成や解釈にあっても考慮されるべき点であることが指摘された。 組織犯罪のもとでは、直接には手を下さない関与者も数多い。それらの者の犯罪(未遂犯)の成立時期については直接実行者が犯罪に着手した時点をもって成立すると考える全体的解決説が当然視されて十分な議論が加えられてこなかった。そこで、ドイツで有力な個別的解決説を批判的に考察しつつ、共同正犯の構造理解にまで遡ってこの問題に検討を加え、全体的解決説の根拠づけと妥当性を確認した。 組織犯罪は国際的拡がりをもつものも少なくない。その際、各国間での刑事実体法・手続法の相違から組織犯罪を捕捉できないとの事態は回避されねばならない。そこで、EUでは共通逮捕状制度が導入され、国連では安保理決議による各国法規制の義務づけが加速した。これらにより、国際的事件においてもより迅速な対応が可能になってきたが、各国の刑事立法の民主性や自国民の保護については問題も提起されていることがわかった。 逆に、国際的な犯罪では、複数国の刑罰法規が重畳的に適用されるとの事態も生じる。この事態を国家主権の問題として放置することは重大な人権侵害であるといわざるをえない。従来の日本の実務では、外国で受けた刑罰を日本で受けるべき刑罰から控除する運用がなされてきたが、今後はさらに、確定判決を経る前の段階でも、対象者の受ける手続的負担に配慮した国家間の調整メカニズムを構築する必要があると思われる。
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Research Products
(4 results)