2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19330131
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
都留 民子 Prefectural University of Hiroshima, 保健福祉学部, 教授 (00236952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高林 秀明 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (00305781)
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Keywords | 貧困 / 失業 / 家族 / 質的研究 / 雇用政策 / 社会保障 / 公的扶助 |
Research Abstract |
被調査者150人のライフコースを、時系列に「職業・家族生活変動の原因事由-状況文脈-社会機関介在-リアクション、戦略とロジック-帰結」に再構成して、12類型(性別-年齢層別-就業・生活の安定性)のアイデンティティの特徴(大きくは「個人化」と「社会化」)を以下のように明らかできた。 12類型に共通して、仕事上(失業含む)の出来事(events)への対応は、「自己防衛」「個別的奮闘」あるいは「個別的抵抗」である。状況・問題の「社会化」は、労働組合に組織された青年・成人の「安定層」=正規労働者層に見られるが、解決は一時的・過渡的であり、社会的制度化には至っていない。不安定層では「失業」と「仕事」の明確な境界がつかず、求職活動が常態化しアイデンティティを安定させない。 家族関係は、学卒後も地域にとどまり、あるいは転出後の帰郷などで、概ね維持できている。同時に、青年層では独立を妨げる「拘束」ともなり(結婚できない)、中年層においてはキャリアを切断させる契機(失業を招きキャリアの不安定化)ともなっている。女性では年齢・生活の安定に関わらず、「結婚」あるいは「離別」が、アイデンティティを大きく規定している。 筑豊地域(直方・田川)では、失業対策制度事業(公的就労)が生活維持の安心感、そして職業的アイデンティティ形成に寄与してきた。 労働および家族の状況・問題は社会化されず、「個別的対応・抵抗」は、スパイラルに貧困(化)をすすめ(健康の悪化も含む)、そこでは家族はしばしば重い「拘束」「負担」となり、貧困の防波堤にはなっていない。他方、安定的な、ポジティブなアイデンティティは、包括的な社会制度(失業対策事業・生活保護など)によって可能となっている。
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Research Products
(5 results)