Research Abstract |
多様体の可微分構造と可微分写像の特異点の関係について調べるため,その最も基本的な場合として,定値折り目特異点しか持たないスペシャル・ジェネリック写像について研究した.閉多様体の場合については既存の研究があったため,特に可微分構造が豊富にある4次元開多様体の場合について詳しく調べ,スペシャル・ジェネリック写像を許容することが,多様体の可微分構造を決定することを多くの場合に示すことに成功した.また,4次元多様体上の安定写像の特異ファイバーを用いることで,4次元有向同境群が無限巡回群となることの新しい証明を得た.さらにその系として,特異ファイバーを用そた4次元多様体の符号数公式の,新しく,しかも見通しの良い証明を得た.これについては2009年6月に信州大学で行われた研究集会において発表した.さらに,円周へのモース写像の同境群について研究し,それを一般次元において完全に決定した.またその応用として,平面へのジェネリックな可微分写像芽を安定摂動したときに現れるカスプの符号付き個数が写像芽の位相不変量となることを示した.また,折り目写像を許容するための障害類について,山口大の安藤氏による結果を用いることで,ホモトピー論におけるポストニコフ分解の観点から,近畿大の佐久間氏,及びトロント大のサディコフ氏と共同で研究を行い,いくつかの場合にその2次障害類を明らかにすることに成功した.また,曲面上の高さ関数であって,臨界値をちょうど3つ持つものについて,その臨界点の個数の実現問題に取り組み,完全な解答を得た.以上のように,今年度の研究により十分な成果が得られたということができる.
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