2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19340039
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梶原 健司 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 教授 (40268115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 克則 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (00176538)
白井 朋之 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (70302932)
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Keywords | パンルヴェ系 / 超幾何関数 / 離散可積分系 / 可解カオス系 / ランダム行列 / 楕円関数 / τ関数 / 双線形化 |
Research Abstract |
本年度は以下の成果を得た.項目番号は交付申請書に記載した課題の番号に対応する.(a)E型アフィン・ワイル群対称性をもつ離散パンルヴェ方程式の超幾何解を構成した.これによって,超幾何解を持つと期待される2階の全てのパンルヴェ系について解として現れる超幾何函数が同定された.(b)離散パンルヴェ方程式に対して「対称化」と呼ばれる特殊化を行って得られる方程式を考察し,特殊化前と比べて超幾何解として異なる超幾何函数が現れること,および行列式構造の非対称性が現れる理由を解明した.これは1990年代前半の,離散パンルヴェ系研究の初期から指摘されていた謎に一つの解答を与えたものである.(c)パンルヴェVI型方程式をリーマン・ヒルベルト対応を基盤として複素力学系的,幾何学的な手法を駆使して考察し,固定特異点周りでの局所有限分岐解が代数函数解であることを示した.特に,大域解が代数函数解である必要十分条件が大域的に有限分岐であることを証明した.これはパンルヴェVI方程式の代数解の分類に向けた大きな一歩である.(d)双線形化や解の構成が困難であった,非自励離散KdV方程式,離散Toda方程式などの1+1次元非自励離散ソリトン系の組織的な双線形化の技法を開発し,いくつかの方程式についてソリトン型の解を具体的に求めた.(e)複素ガウス型ランダム行列の行列式点過程に関連する線形汎函数の中心極限定理の詳細な研究を行った.(f)楕円函数の倍角公式から得られる1次元可解カオス系を考察し,その超離散化に成功した.超離散化としてもっとも基本的なカオス系であるテント写像とその一般解が得られ,副産物としてテント写像のトロピカル幾何学的意味づけを与えた.これは超離散化を非可積分系に適用して非自明な結果を得た多分初めての例であり,テント写像の背後に楕円曲線の世界があるという主張は理論的にも興味深いものであろう.
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