2007 Fiscal Year Annual Research Report
電子移動を伴う化学反応を追う:電極/水溶液界面での第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
19340077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大谷 実 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (50334040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉野 修 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90361659)
森川 良忠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80358184)
館山 佳尚 材料研究機構, 研究員 (70354149)
浜田 幾太郎 大阪大学, 産業科学研究所, 招聘研究員 (80419465)
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Keywords | 電気化学反応 / 固液界面 / 水素発生反応 / 電気二重層 / 燃料電池 / 第一原理計算 / 分子動力学シミュレーション / 有効遮蔽 |
Research Abstract |
本研究では,電子移動を伴う電気化学反応を第一原理計算を用いてシミュレーションを行うことを目的としている。本研究課題開始前に行っていた予備計算も含めて,本年度はPt表面への水素原子吸着反応のシミュレーションを成功させ,学術誌において発表を行った。本研究課題の最初のターゲットは水の電気分解反応の陰極で起こる水素発生反応の理解である。初年度はその水素発生反応の第一段階である水素原子のPt表面への吸着を計算した。水素原子は水中ではヒドロニウムイオンとして存在し,H30+という分子を形成する。シミュレーションでは32分子の水分子と水素原子,および36原子のPt表面を用意する。分子動力学計算を数ピコ秒行って十分平衡化を行った後に,Pt表面へ余剰電荷を注入する。これによりPt/水界面に電圧が印加される。Pt表面は負に帯電するので,表面第一層の水は水素原子を表面に向けた構造を取る。さらに,電圧を強くすると,表面付近の水の濃度が上昇し,表面を水素結合ネットワークが覆うことが分かった。約-1Vの電圧を印加したところで水素原子がヒドロニウムイオンからPt表面へ電子移動を伴って吸着した。詳しい解析により,電圧を印加することによる水の遮蔽効果,ヒドロニウムイオンの非占有軌道の反応前後の振る舞いや反応後の得意な再配置運動など多くの新しい知見が得られた。従来までの計算手法では固液界面で起こる電気化学反応を直接計算することは困難であった。その為,電気化学的な実験と量子論を基にした精密な計算科学は長い間密接につながってはいなかった。我々が本研究課題を遂行するために開発した有効遮蔽体法はこの状況を打破し,実験と理論計算の相補的な発展を促し,実験結果の微視的な立場からの理解,さらには新たな触媒などの物質探索へとつながっていくものと考えられる。
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Research Products
(28 results)