2009 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体電子構造と電子対形成における頂点酸素の役割解明
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19340093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 慎一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 頂点酸素 / 角度分解光電子分光 / STM / STS / ドーパント原子の秩序配列 / Tcの向上 |
Research Abstract |
頂点酸素のCuO_2面からの距離、頂点酸素サイト及びそれに近接した金属イオンサイトの乱れがT_cを変化させることを本研究で実証した。STMやARPESを主とするスペクトロスコピーにより解明されたT_cを変化させるメカニズムは、 (1)頂点酸素の距離が大きくなると、CuO_2面内のクーパー対形成相互作用が強くなり、更に多層系ではCuO_2面間の結合が強くなり、T_cを増大させる。 (2)頂点酸素を含む原子層の乱れは、超伝導秩序を「擬ギャップ秩序」との競合状況に変化をもたらし「擬ギャップ」を優勢にする。その結果クーパー対密度(超流動密度)が減少し、T_cを下降させる。 上記メカニズムは、酸素の同位体置換(^<16>O→^<18>O)においても働いており、同位体置換が超流動密度を減少させることが確認されている。通常の超伝導体の同位体効果は、電子間引力を媒介するフォノンのエネルギー変化を通して、引力相互作用、超伝導秩序パラメーターを変化させるが、銅酸化物では全く異なる同位体効果のメカニズムが働いていることがわかった。 頂点酸素がドーパント原子の役割を果たしているSr_2CuO_<3+δ>に注目し、頂点酸素を規則配列させることによりT_c=95Kの超伝導が実現することを平成19年度に報告した。H21年度は、Srの一部をBaに置換し、T_cを98Kまで上昇させることに成功した。イオン半径の大きなBaにつられて頂点酸素の距離が大きくなり(1)のメカニズムが働いたと考えられる。T_c=98KはCuO_2一層の物質では最高のT_cであり、同じ結晶構造をもつLa_<2-x>Sr_xCuO_4のT_cの倍以上である。CuO_2面一枚でも、条件を最適化すればT_c=100Kの超伝導が実現可能であることを実証する結果である。
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Research Products
(4 results)