2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物の多自由度結合系における強相関量子相の研究
Project/Area Number |
19340097
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 教授 (90176363)
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Keywords | 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / 多自由度結合系 / 量子物性 / NMR |
Research Abstract |
強相関電子系である3d遷移金属酸化物では、電荷・スピン・軌道・格子の多自由度が結合することによって新奇な量子相が出現する。本研究では、核磁気共鳴(NMR)法を用いて、そのような量子相における異常物性の発現機構の解明と新奇物性の開拓を目指した研究を行った。本年度は、以下に述べる成果を主に得た。1.電荷秩序転移を伴った金属絶縁体転移を起こす擬一次元物質β-Na_<0.33>V_2O_5を対象にして、金属相のスピンダイナミクスを理解するために核スピン格子緩和率を測定し、Naイオンの秩序無秩序転移で、Vの電子状態が大きく変化することを見出した。同時に、この系が一次元系固有のスピン拡散を持つことを初めて観測し、朝永ラッティンジャー液体のモデルに立脚してスピンダイナミクスを議論した。2.β-Li_<0.33>V_2O_5では、β-Na_<0.33>V_2O_5とは異なるカチオンの秩序化を示すこと、および、Liイオンの変位に伴う新しい電荷の不均一化を金属相で示すことを見出し、β構造を持つバナジウムβ-A_<0.33>V_2O_5では、Aカチオンが電子状態に大きな影響を与えることを明らかにした。3.ホーランダイト型バナジウム酸化物K_2V_8O_<16>を取り上げ、単結晶試料を用いたナイトシフトの測定から、局所帯磁率の異方性軸が温度とともに回転する特異な現象を見出した。これは、多軌道効果に起因すると考えられる。4.三角格子を形成する擬一次元コバルト酸化物Ca_3Co_2O_6は、フラストレーション効果による新奇物性が期待できる系である。NMR測定から、常磁性相において、一次元鎖内の強磁性相関が高温で発達し、低温で鎖間の反強磁性相関が発達することを明らかにした。
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