2009 Fiscal Year Annual Research Report
多次元NMR・多次元X線散乱・多次元赤外分光における基礎理論の構築
Project/Area Number |
19350011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 吉隆 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (20270465)
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Keywords | 二次元分光 / X線 / NWR / 赤外 / ラマン |
Research Abstract |
凝縮相内において化学過程は、不均一広がりや、格辛振動や溶媒との相互作用で生じる緩和に埋もれ、実験的のみならず理論的にも解析することが非常に難しい。 通常の実験ではレーザーなどの励起パルスにより分子の定常状態を乱し、その緩和を2つ目のプローブで測定する。申請者もその発展に重要な寄与をした多次元的な実験は励起とプローブの間に、複数の励起パルスを挿入することで、励起状態間の干渉を生じさせながら観測する。干渉を利用しているため分子の複雑な動きを抽出して観測することが可能で、凝縮相の化学反応過程で特に有用である事が、申請者を含めた多くのグループにより実験的にも理論的にも見いだされている。2次元的計測法は系の状態に大変敏感な測定方法と期待されるが、敏感すぎるためシグナルの多次元プロファイルが大変複雑な形状になるため、理論のサポート抜きに解析は困難である。 本研究では多次元振動分光に培われた手法を拡張することにより、多次元計測理論をESR, NMRにも適用できるように拡張し、また量子情報理論で重用なコンカレンスという測定量との関係などを論じる事に成功した。まず多次元振動分光についてもこれまでの適用範囲を拡張し、量子効果の重要となる高振動励起に対する理論的な考察を行った。また電子移動反応を非断熱強度の弱い場合から強い場合まで統一的に取り扱う事の出来る方程式を導出し、電子移動反応におけるマーカスパラボラからのずれを統一的に論じる事に成功した。電子励起状態についてはDNAの励起子移動における熱浴の不均一性の影響を複数の熱浴を用いて議論した。また2qビットの量子情報のモデルを用いて、申請者の開発した階層型運動方程式を用いコンカレンスが熱浴との相関によりゼロにならない事も示した。さらにNMRにおける強い非対角緩和の影響も多次元NMRスペクトルを計算する事により解析した。
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