Research Abstract |
本研究では、ナノ粒子が2次元(2D)配列した凸凹構造をもつ周体表面上で起こる新規なレーザー脱離ソフトイオン化(SALDI)法を確立することを日標とする。本年度において,クエン酸Na還元法によって合成された金ナノ粒子を用いて,ポリエチレングリコール(PEG)のAu-SALDIマススペクトルを測定した、平均分子量が1000以下のPEGでは,感度,ノイズともにMALDIよりも良好なスペクトルが得られた。しかし,2000以上のPEGでは,フラグメンテーションが顕著に生じるとともに強度と分解能が低下し,金クラスターイオンの強いピークが出現した.他の貴金属Pt,Cu,Agのナノ粒子よるペプチドangiotensin IのSA:LDIイオン化を比較したところ,イオン化効率と質量分解能はAg<Cu<Au<Ptの順に増大した.Pt金属のバルク融点が2045Kと最も大きくかつ熱伝導度が最も小さいので,レーザー照射によって極小的に温度が最も高くなる.そのために試料の脱離イオン化が促進されると推定した.そこで,白金の特徴を生かした上に,さらに粒子表面に花びら状の突起をもった白金ナノ粒子(ナノフラワー)を新規に創製し,白金ナノフラワーのSALDI-MSへの可能性を検討した。その結果,2これまで金属ナノ粒子のSALDI-MSにおいて,分子量3,000を越える分子のイオン化は困難とされていたにもかかわらず,白金ナノフラワーを利用して分子量10,000以上のcytochrome Cのソフトイオン化に成功した.さらにangiotensin I,insulin,cytochrome cに対して,それぞれ0.7,5,20fmolの高感度なイオン化が達成された.
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