2008 Fiscal Year Annual Research Report
チオシアネート加水分解酵素コバルト反応中心の機能と形成の分子機構
Project/Area Number |
19350080
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
尾高 雅文 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 准教授 (20224248)
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Keywords | 加水分解酵素 / チオシアネート加水分解酵素 / ニトリルヒドラターゼ / 翻訳後修飾 / アクセサリー蛋白質 / 金属酵素 / 結晶構造解析 / 無細胞タンパク質合成 |
Research Abstract |
チオシアネート加水分解酵素(SCNase)はチオシアネートの水和、加水分解反応を触媒する酵素であり、アミノ酸配列や立体構造の高い相同性からニトリルヒドラターゼ(NHase)と同ファミリーに分類される。触媒中心は翻訳後修飾を受けた2つのシステイン配位子を含む特異な構造のコバルトセンターであり、γサブユニットに結合している。本年度はコバルト反応中心の機能を明らかにするために以下の研究を行った。SCNase基質ポケットに存在する2つのアルギニン残基(βArg90,γArg136)をそれぞれNHaseで保存されているフェニルアラニンとトリプトファンに置換した変異体を作成し、酵素活性に対する影響を解析した。その結果いずれの変異体もSCNase活性を示さず、弱いNHase活性を示した。すなわち、両酵素の基質選択性は基質ポケットの環境の違いにあり、触媒反応機構自体は同様に進行すると考えられた。SCNaseの触媒反応は早すぎて時間経過を構造から追跡することは不可能なため、通常基質の1/100000程度のkcatで反応する非常に弱い基質t-butylisonitrileを用い、鉄型NHaseの時間分割結晶構造解析を行った。その結果、基質は鉄反応中心の第6配位座に結合した後、システインスルフェン酸酸化修飾の酸素原子で活性化された水分子の攻撃を受け、水和されることが示唆された。前述の変異体の実験から両酵素の反応機構は基本的に同一であることが予測されるため、SCNaseにおいても、コバルト反応中心のシステインスルフェン酸酸化修飾が触媒反応において、溶媒の水分子を活性化して基質に求核攻撃をしていることが予測された。
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