Research Abstract |
本年度は0_2センサー蛋白に焦点を合わせ、細菌(B.subtilis)のHemAT-BsとE.coliの、EcDOSを調べた。これらはN末端側で0_2を検出すると、C末端側で生化学機能を発現する。N末端側にはヘムがあり、ヘムに0_2が結合するとその周りにコンフォメーション変化が起こり、C末端側に構造変化を引き起こして、HemAT-Bs、では次の蛋白へ情報伝達して最終的にはその生物の走光性を変え、EcDOSではリン酸エステル化の酵素反応速度を高める。COやNOもヘムに結合するが機能発現は起こらない。大きさのよく似た2原子分子を蛋白質が識別して、シグナルを生み出すメカニズムを解明する事が本研究の目的である。ヘムに0_2,CO,NOと云った環境因子が結合した時のヘムの構造変化を可視光共鳴ラマン分光で,その時の蛋白部分の構造変化を紫外光共鳴ラマン分光で検出した。また,遺伝子操作で特定のアミノ酸残基(HemAT-BsではTyr13,49,70,133,148,184,Trp132,Thr95,His86、EcDOSではTyr55,Tyr80,Tyrl25,Tyr126,Trp53,Trp101)を部位特異的に置換した変異蛋白を作り,どの残基が変化するかを帰属した。どちらの結果も,国際的に評価の高いJ.Biol.Chem.にフルペーパーとして受理された。HemAT-Bsについて詳述すると、Fe-0_2伸縮振動から,0_2結合体に3つの構造があり,0_2と1番強い水素結合を作るものがシグナル伝達の活性種であった。COは水素結合を作らない。0_2の結合による水素結合状態の変化は,蛋白の全体構造に影響を与え,その大きさはCOやNOの場合とは異なっていた。換言すると,蛋白はその構造変化として、0_2,CO,NOの結合を識別している事が明らかになった。
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