Research Abstract |
本研究では袖壁付き柱を有する鉄筋コンクリート建物を対象にして以下を目的とする実験的研究および解析的研究を行う。(1)袖壁付き柱部材の強度と靭性,残存軸耐力,損傷と変形の関係を実験的に明らかにする,(2)袖壁付き柱の復元力特性,とくに最大耐力以降の耐力低下を評価しうる解析モデルの有効性を検証する,(3)袖壁付き柱の強度と靭性,残存軸耐力,損傷の実用的な評価法を提案する,さらに,(4)袖壁付き柱を含む構造物の耐震性能評価手法,耐震診断法の妥当性を解析的に確認する。平成19年度には両側袖壁付き柱部材の基本的な強度,靭性性状を把握するため,袖壁長さ比およびせん断スパン比をパラメータとした静的繰り返し載加試験を行った。試験体は内法高さ1400mmの1層1スパン鉄筋コンクリート造袖壁付き柱で,曲げ降伏型4体(シアスパン1400mm),せん断破壊型4体(シアスパン700mm)の計8体である。断面形状は全て共通で柱400mm×400mm,袖壁(柱両側)の水平長さは400mm,厚さは100mmで実大スケールの約1/2を想定した。柱および袖壁は既往の実験結果および既存の建物の設計を参照して,今後袖壁付き柱の実験研究のプロトタイプになることを想定して袖壁の標準配筋は複配筋とし,また,壁横筋は全て柱の内部を貫通している。帯筋およぼ壁筋量を変化させて,また袖壁全体の両方向に斜め筋を施した場合も比較した。さらに,パイロット的に端部十分に拘束した配筋詳細の場合も比較した。実験により,配筋量および配筋詳細がせん断耐力および曲げ靭性に与える影響を実験的に明らかにするとともに,袖壁付き柱のせん断強度に対して既往の実用設計式を合理的に適用しうる方法として提案した分割累加強度式による計算値,曲げ解析などと実験結果を比較し,算定式および解析の精度が妥当であることを検証した。
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