Research Abstract |
1.肝前駆細胞培養系最適化 ラット胎児肝細胞およびES細胞について,液性因子・三次元培養・酸素供給の3点を総合的に最適化した培養条件を最終的に確定し,デバイスのin vitro育成条件に用いることを目的とした.まずラット胎児肝細胞においては,FGF-1,FGF-4,HGFを用いる液性条件下で,ポリジメティルシロキサン性の酸素透過膜上で培養をすることで,前駆細胞集団の持つ優れた自己組織化能を最大限に発揮させることに成功した.すなわち,酸素の直接供給で,線維芽細胞やマトリックス物質からなる下層と肝実質細胞からなる上層の厚い層構造が構築された.この構築挙動は酸素の実暴露濃度に依存し,5%では下層の発達が,20%では上層の発達がそれぞれ促進され,始めの1週間を5%,以後2週間まで20%とした培養条件が最も厚く機能的にも優れたシート状の組織を形成させた.これは三次元担体等を用いなくとも,そのまま移植できる強度をもつものであり,その利用が期待された.ES細胞からの分化系については,単層培養においては,前年度にはじめ低酸素濃度で,後期で高酸素濃度で培養することが最終的な肝分化効率を向上させたが,三次元化については,初期から行ったものと後期から行ったものは同等であり,中期から行ったものはやや分化効率が低下した.これは,初期からの三次化は結局EB様構造を経ることでin vivoの発生プロセスに近くなったこと,後期からの三次元化は既に肝方向にある程度分化した細胞同士の接触が高まることで分化がそれぞれ促進されたためと考えられた. 2.改良型デバイスの試作および血流導入移植 平成20年度では,頚動脈間にデバイス移植実験を行ったが,内部の細胞が死亡してしまう,という困難に直面した.その主要な原因は,血球成分が三次元担体内に長時間滞留することであることが判明したため,そこで対策として,人工的な微細流路に導入しながらも,半透膜等を用いて三次元担体に固定化された肝前駆細胞と血流とを分離する改良型デバイスを作成し,移植による高度な肝組織構築を試みた.その結果,移植肝細胞の生存性を著しく向上させることができた.一方でこの事実は,もし移植直後から血流を導入する組織構築を目指した場合には,血管ネットワークと三次元細胞固定部とを明確に区別し,前者から後者への血液の漏れを防止しておくことの必要性を強く示唆するもので,より完成度の高い血管ネットワーク構造のin vitroでの構築が要求されることとなる.
|