2007 Fiscal Year Annual Research Report
遠隔シス因子によるマウス組織特異的Shh遺伝子発現制御と染色体動態
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19370003
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
城石 俊彦 National Institute of Genetics, 系統生物研究センター, 教授 (90171058)
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Keywords | Shh遺伝子 / 非翻訳保存配列 / 非翻訳保存配列 / 遺伝子発現制御 / 遠隔エンハンサー / 染色体動態 |
Research Abstract |
ゲノム上の位置によるエンハンサーの発現制御の違いを明らかにするため、Shhの翻訳領域に不安定型GFPを挿入したノックインマウスを用いて、発現解析を行った。Shhは、約1Mb離れた四肢のエンハンサーに加えて、翻訳領域の5'側およびイントロン内に神経管底板と脊索での発現を制御する近位のエンハンサーをもつことが報告されている。このノックインマウス胚では、肢芽のGFP発現細胞はまだらに分布していたが、神経管底板と脊索ではほぼ全ての細胞がGFP陽性であった。肢芽でのGFPの蓄積が不十分であったことより、遠位のエンハンサーは、Shhの組織と特異的な発現レベルに関与することが予想された。この結果を確認するために、イントロンプローブを用いて、野生型マウス胚におけるShhのpre-mRNAの検出を行った。mRNA陽性細胞におけるpre-mRNA陽性細胞の割合は、神経組織において有意に高く、組織によるShh転写レベルの違いが明らかにされた。 さらに、近位に置かれたエンハンサーの挙動を調べるため、肢芽の遠隔エンハンサーとレポーター遺伝子を連結したトランスジェニックマウスを作製した。トランスジェニックマウス胚の肢芽におけるGFPレポーターは、本来の発現領域に比較して広く発現し、Shhが発現を停止する発生段階においても検出された。つまり、人工的に近位に置かれたエンハンサーは、領域特異的かつ時期特異的に正確な転写制御を行えなくなることが示唆された。このトランスジェニックマウスから尾の繊維芽細胞を調製し、Shhの発現に必要なHoxd13とFgf4を過剰発現させると、レポーターの発現が確認された。Shhの発現のない成体の尾の繊維芽細胞においても上流因子に応答してレポーターが発現したことから、遠隔エンハンサーは、プロモーターとの接近と解離によって細胞のコンピテンスを制御する可能性が考えられる。
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