2007 Fiscal Year Annual Research Report
表現型可塑性の進化生態学的研究:群集構造からとらえる
Project/Area Number |
19370005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 欣也 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (30222186)
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Keywords | 食物網 / 表現型 / 可塑性 / 間接効果 / 越冬幼生 / 共食い |
Research Abstract |
生物の表現型は遺伝子によって規定されているが、環境に応じた自由度も有している。同一の遺伝子型の生物が環境変化に応じて異なる表現型を示すことは、集団遺伝学では"環境分散"として取られてきた。一方、環境の個々の文脈と表現型の関係に目を向けた進化生物学の分野では、そうした表現型のバリエーションを"表現型可塑性"と捉える。 生物はしばしば特定の環境に反応して、形質を可塑的に変化させることによって、その環境に適応していることが知られている。池の生物群集の構成メンバーである両生類は、群集内の生物間相互作用に応じて形態を変化させる。北海道の森林の林縁部に形成される池に生息するエゾアカガエル(Rana pirica)のオタマジャクシは捕食者となるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の存在に対して、頭胴部を膨満化させる。これは丸のみ捕食をするエゾサンショウウオ幼生に対する誘導防御形体であることが明らかになっている。一方、エゾサンショウウオ幼生はオタマジャクシの存在で口顎部の幅を広げた頭でっかち型になる。これはオタマジャクシを丸のみするための誘導攻撃形態であることが知られている。膨満化は、サイズ捕食制限に対する対抗手段として機能している。防御形体の発現にはコストを負うことが想定される。そして、その発現量と防御効果は両種が発生を始めるタイミングや成長の経過と関連する。 孵化タイミングは両者のサイズの違いを生じさせる。サイズの違いは個体の形体発現に影響を及ぼし、形態発現の違いは捕食-被食の効率を左右し、捕食-被食の結果はさらに各集団の個体のサイズの違いを導く。そして、池内の各集団の個体数は、こうした過程で変化する。さらに、この過程は、各種が変態し、次の生活史ステージに移行するタイミングに影響する。この一連の関係に予測されるパターンを洗い出すための予備的野外実験を遂行した。
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