Research Abstract |
本年度実施したことは,大きく分けると,(1)クチバシカジカの放精のタイミングと放精精子量の測定,(2)交尾後卵巣から精子の回収方法をグッピーで確立する,(3)ニジカジカの父性決定に及ぼす放精量と放精順番の影響評価実験,(4)カジカの国際シンポジウム開催,(5)カジカ類の生殖器官と精子の組織観察,の5つになる。 (1)本種は近縁に交尾種がいるので,交尾するかしないかに焦点を当てて行動観察と放精タイミングを調べた。雄は産卵中の雌と離れた位置にいる時に,臀鰭を煽る行動をとる。この時に回収した海水中に精子が観察されたことから,この時に放精すると判断され,本種は非交尾種であることがわかった。(2)Evans et al.1998に確立されている方法であったが,こちらの研究室でも実施できるようになった。次年度はカジカでも手技を確立サる。(3)1繁殖期中受精可能な精子量の測定,この予備実験にしたがった放精量でスパマトクリット値,精子活性がほぼ同値の雄の精子を使い,交尾の順番を変えて,同量の精子を卵巣に注入し,父性判定を行った。本年度は,実験例数が2例と少なく,しかも,一方は先の雄,もう一方は後の雄と,結果がわかれ,結論を得るには至らなかった。(4)日本魚類学会シンポジウムとして10月8日に行った。外国人3名および本研究に参加する4名を含む13名の演題で約100名の参加があり,非常に活発な論議ができた。(5)生態が未知種も含め精巣および精子頭部の構造を20種で種間比較し,精子を形成する精巣実態の構造と精子頭部の形状に,交尾種と非交尾種に対応する変異が見つかり,系統と機能との観点から考察した研究成果を上記の国際シンポジウムで発表した。
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